2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧
ユージュアル・サスペクツ [Blu-ray] 【終わってみれば目から鱗】 「ユージュアル・サスペクツ」とは、「日常的な(あるいは、常連の)容疑者たち」という意味だそうです。なるほど、登場人物は皆、札付のワル。でも、一番のワルは誰?というのがこの映画の…
百貨の魔法 【人の善意が紡ぎ出す魔法の物語】 地域の歴史ある百貨店……たぶんどの都市にもそんな百貨店があるんだろうと思います。この小説を読んで、親に連れられて初めて百貨店に行った日のことを思い出しました(半世紀以上も前のことなのに、レストラン…
帰ってきたヒトラー [Blu-ray] 【コメディの皮を被ったシリアスな社会派映画】 ヒトラーをコメディにするなんて、なかなかできない荒業です(チャップリンの『独裁者/1940アメリカ』は、ホロコーストが本格化する前の映画です)。同名の原作小説がヒットし…
崩れる脳を抱きしめて 【純度の高い恋愛ミステリー】 2018年本屋大賞ノミネートの10作品が店頭に並んでいたので、数冊仕入れてまいりました。どれも結構分厚いので、1日1冊というわけにはいかないだろうと思いますが、頑張って読破して、できるだけ記憶が…
幸せはパリで [DVD] 【夢見る大人のためのお伽噺】 50年代のアイコンがオードリー・ヘップバーンなら、60年代のアイコンはカトリーヌ・ドヌーヴ。『ローマの休日』のヘプバーンと『シェルブールの雨傘』のドヌーヴの眩いばかりの美しさは、映画遺産級と言っ…
残業税 (光文社文庫) 【リアルで真面目なお仕事小説】 国あるところ税あり、税あるところ脱税あり……これは神代の昔からの鉄則のようです。この小説は、誰もありがたいと思わない“税”と、その“税”の徴収に使命感を燃やす税務署職員にまつわるお話です。 同じ…
ブルックリン [Blu-ray] 【若い女性の究極の選択】 美しい映像と魅力的な女優、この二つが揃えば恋愛映画は成立する、という見本のような映画です。これは女優シアーシャ・ローナンによる女性のための映画。男性の理解は得られなくても、女性の共感は得られ…
たまうら: 玉占 (小学館文庫) 【幸せに生きるための秘訣】 分かりやすい文章で内容もライト、気楽な気分でサクサク読めるエンタメ時代小説(ジャンル的にはファンタジーでしょうか)。 この小説のターゲットはたぶん若年層だろうと思いますが、これを幸せに…
アフター・ウェディング スペシャル・エディション [DVD] 【日本人的感性を感じるデンマーク映画】 やっぱりデンマーク映画はいいですね。『バベットの晩餐会』や『ミフネ』と同じく、この映画も、静かで深くて繊細で、なんとなく日本人の感性にしっくりくる…
新装版 影踏み鬼 (双葉文庫) 【鮮やかなどんでん返し】 切れ味鋭い文体、緻密な構成、意表を突く結末、どれをとってもハイレベルな、乱歩賞作家による表題作外4篇を収録した短編集。 人間の業の深さを思い知らされる、ホラーに限りなく近い時代ミステリーで…
西洋鏡 [DVD] 【映画館で観てみたい映画】 まだ中国が辮髪と纏足の時代だった頃、中国で初めて映画を作った青年リウの物語。 この映画、中国版『ニュー・シネマ・パラダイス』というふれこみですが、確かにリウの無垢の映画愛は、トトやアルフレードと相通じ…
木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫) 【男のズルさと女のしたたかさ】 主な登場人物は2人だけ。物語は、章ごとに男の視点と女の視点が入れ替わる形で進行します。 終始漂う不穏な空気に息苦しさを感じ、早く解放感を味わいたい一心でついつい頁を捲る手が早くなる…
オー! ゴッド [DVD] 【信じる者は救われる】 古き良き時代の名残りを留める70年代のアメリカ(人)の宗教観を軽妙に描いた作品。荒唐無稽なストーリーながら、切り口がユニークで、語り口もユーモラスなので、宗教に全く関心がない人でも十分楽しめる映画か…
賢者の贈りもの: O・ヘンリー傑作選I (新潮文庫) 【手練の短編作家が描く人生の妙味】 泣き笑いのツボを外さない短編の名手O・ヘンリーの表題作外15の作品を集めた傑作短編集。 100年以上も前に書かれた作品なのに、古さを全く感じさせないところが凄いと思…
この森で、天使はバスを降りた [DVD] 【アメリカのヒューマニズム】 タイトルのイメージと違って、シリアスで濃厚なヒューマンドラマです。ストーリーはシンプルですが、なかなか吸引力のある映画だと思います。 感想を一言で言えば、“いかにもアメリカ的”と…
あと少し、もう少し (新潮文庫) 【駅伝小説にハズレなし】 この小説、同じ駅伝小説の『風が強く吹いている/三浦しをん』や『チーム/堂場瞬一』に比べるとやや小粒な印象は受けますが、瀬尾作品ならではの“伸び伸び感”や“ほっこり感”が味わえて、これはこれ…
シラノ・ド・ベルジュラック ジェラール・ドパルデュー Blu-ray 【恋に殉じた男の苦悩と矜持】 “男らしさとはなにか”と問われたら、私は即座に“痩せ我慢”と答えます。そのココロは……この映画を観ていただけたら分かります。 ……しかし、痩せ我慢の人生なんて…
悟浄出立 (新潮文庫 ま 48-1) 【文学への高邁な志が伝わる短編集】 若い頃私が最も耽溺した日本の作家は、梶井基次郎と中島敦です。和漢洋に精通した夭折の天才、中島敦の格調高い文体に一瞬で魅了され、全集を探し回った記憶があります(結局、カネがなくて…
LION /ライオン 25年目のただいま(字幕版) 【故郷を喪失した青年の自分探しの旅】 インドでは、毎年8万人もの子どもが行方不明になっているとか。いくらカオスの国だからって、あんまりの数字です。日銭を稼ぐために重労働をする子どもたちや汚れた身なりの…
孤狼の血 (角川文庫) 【女性作家が描く任侠の世界】 映画『仁義なき戦い』を彷彿とさせる世界観。昭和の男たちが熱いです。しかし、こんな血湧き肉踊る作品をモノにしたのが女性作家だなんて……なによりそこに驚きます。 【あらすじ・感想・レビュー】 昭和63…
ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢[DVD] 【若きダンサーたちの熱き闘い】 『コーラスライン』や『オール・ザット・ジャズ』など、ブロードウェイを舞台にした映画はいくつか観たことがありますが、この映画はそれらとは似て非なるもの…
落ちぬ椿: 上絵師 律の似面絵帖 (光文社時代小説文庫) 【恋に仕事に一途な女職人シリーズの開幕】 『上絵師 律の似面絵帖』シリーズの第一作。作者はミネソタ大卒、バングーバー在住とか。そんなキャリアの人が、なんで時代小説なんでしょう。そのギャップに…
マルタのやさしい刺繍 [DVD] 【何かを始めるのに遅すぎるということはない】 女性のパワーはいくつになっても衰え知らずですね。恐れ入ります。この映画、スイス版『カレンダー・ガールズ』ってトコでしょうか。夢に向かって頑張るマルタと彼女を支える仲間…
烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫) 【気鋭の新人が描くパラレルワールド】 これって、ファンタジー?ミステリー?それとも王朝ロマン?……よく分かりませんが、まあ、人が烏に変身できることを除けば、ミステリアスな王朝ロマンってトコでしょ…
やかまし村のギフトボックス [DVD] 【メルヘンの世界】 季節は夏。野原一面の花、森を渡る鳥の囀り、雪解け水を湛えた湖……スウェーデンの自然ってホントに豊かですね。そんな美しい自然の中で無邪気に戯れる子どもたち。彼らがイタズラ好きの妖精のようにも…
飛ぶ教室 (新潮文庫) 【騎士道精神を持った腕白小僧たち】 ケストナー原作の映画『点子ちゃんとアントン』と『ファミリー・ゲーム(ふたりのロッテ)』がとても良かったので、一度小説の方も読んでみたいと思っていました。 ……で、結果は期待した以上。この…
コリーナ、コリーナ [DVD] 【2人の名優】 子役のティナ・マジョリーノ(モリー役)がメッチャ可愛いです。天真爛漫で、伸び伸びしていて、思い遣りがあって……親なら誰でもモリーみたいな子に育ってほしいと思うんじゃないでしょうか。 それに、ウービー・ゴ…
ロートレック荘事件 (新潮文庫) 【難敵、叙述トリック】 これは評価の分かれるミステリーだと思います。なんかズルい、と思う人もいれば、これは鮮やか、と唸る人もいるでしょう。ただ、どちらにしても、“一気に読ませる”という点では、さすが巨匠という感じ…
ぜんぶ、フィデルのせい [DVD] 【キョーサン主義ってなに?】 幼い女の子が主人公だから、てっきり微笑ましいほっこり系の映画かと思ったら、意外や意外、なかなか手強い映画です。 子どもの目から見た“キョーサン主義”、そのよく分からないものを通して見た…
銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫) 【あけましておめでとうございます】 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて、新春第一弾は、正月気分に相応しい?人情モノの時代小説です。 これは泣けます。時代小説でこんなに泣けたのは『蛍草/葉室麟』以来です。元…