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🔴本「銀二貫」感想*あゝ、日本人で良かった*髙田郁(幻冬舎時代小説文庫)レビュー4.4点

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

【あけましておめでとうございます】 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新春第一弾は、正月気分に相応しい?人情モノの時代小説です。

これは泣けます。時代小説でこんなに泣けたのは『蛍草/葉室麟』以来です。元旦からこんな良い本に出会えて幸先いいなあ、なんてホクホクしています。

【あらすじ・感想・レビュー】

父親の仇討ち現場で、大阪の寒天問屋の主、和助に銀二貫で拾われた侍の子、鶴之輔が、名を松吉と改めて商人としての道を歩み始め、数々の試練に耐えながら人生を切り拓いていく、というストーリーです。

銀二貫という大金が天神様の配剤のように人と人との縁を取り持ち、正しい行いをする人たちを救っていきます。そこがこの作品の隠し味的妙味かと思います。

髙田さんの作品は『ふるさと銀河線 軌道春秋』以来ですが、やっぱりいいですね。

愚直なほどに真っ直ぐで、ひたすら忠勤に励む松吉、義理人情に篤く、懐の深い和助、少し了見は狭いが、根は優しい番頭の善次郎、お人好しで思いやりのある先輩丁稚の梅吉、一途で凛とした松吉の初恋の人、真帆……登場人物の一人ひとりが、ピンと背筋を伸ばして、自分に恥じない生き方をしています。そして、それぞれが人間的魅力に溢れています。構想段階での人物造形がしっかりしているからこそ、これだけ感情移入できるんでしょうね。

また、作品の随所に登場する寒天料理や糸寒天、羊羹の製造などの描写もさすがです。台所に立ち昇る湯気、糸寒天の仄かな涼味、晒し餡の濃厚な旨味といったものがリアルに頭に浮かんで、食欲をくすぐります。江戸時代の食文化って職人の知恵がいっぱい詰まっていて、ホントに奥深いものなんですね。

……というわけで、この作品、大阪商人の義理と人情、意地と心意気にホロリとさせられ、当時の食文化の奥の深さに感じ入る、とても感銘深い一作です。

元旦からこういう日本人の美徳のようなもの(我慢強さ、律儀さ、正直さ、気遣い、思い遣りなど)に触れると、一層めでたい気分になって、あゝ、日本人で良かった、とつくづく思います。