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🔵映画「マクファーランド 栄光への疾走」/(2015アメリカ)感想*ヒスパニック系住民の居心地のよい温かさ*レビュー4.0点

マクファーランド - 栄光への疾走 - (字幕版)

マクファーランド - 栄光への疾走 - (字幕版)

【劇場未公開はもったいない】

コレって劇場未公開⁉ちょっともったいないですね。ディズニー十八番の実話モノなのに(しかもケビン・コスナー!)。

題材がマイナースポーツのクロスカントリー、ストーリーが王道のサクセスストーリーと来れば、確かにジミでベタな印象は拭えませんが、そこは実話の力、素直に感動できるフツーに良い映画だと思います。

やっぱり人の善意が感じられる映画っていいもんですね。特に、ヒスパニック系住民たちの優しさ、温かさにはうるうるしっ放しです。

【あらすじ】

アイダホの高校で問題を起こしてカリフォルニアのマクファーランド高校に左遷されたフットボールコーチのジム・ホワイトは、一家を揚げてマクファーランドの街に転任する。

しかし、そこはヒスパニック住民が数多く暮らす貧しい農業地域で、妻や娘たちは失望の色を隠せない。ジムもまた、先輩フットボールコーチとのトラブルが原因で部のコーチを解任され、失意の日々を過ごしていた。

そんな折、ジムは体育の授業で生徒たちの脚力に驚かされる。彼らは家族と共に農地で働き、毎日家から高校まで走って通っていたのだ。

ジムはクロスカントリー部の立ち上げを思い付くが、陸上の経験のないジムと、生活の重荷を背負う生徒たちの前には、様々な困難が待ち構えていた……。

【感想・レビュー】

左遷されたコーチ、クロスカントリー部を立ち上げ→生徒、渋々付き合う→初戦惨敗→生徒、がっくり→生徒の父兄の反対→部の存続の危機→コーチ、頑張る→生徒、やる気になる→州大会への出場権獲得→そして州大会の結果は?……と、ここまで書いたらネタバレなんでしょうが、この作品に関しては、結果ではなくプロセスが肝なので、まあ、ノープロブレムということで。

ちょっと出来すぎのストーリーに思えますが、実話なのでケチのつけようがないですよね。何と言っても、見どころは、コーチと生徒たちの成長のプロセスです。

左遷に不満タラタラで、マクファーランドで実績を挙げ、早く待遇のいい高校に移りたいと考えているジム。農作業の手伝いに明け暮れ、将来への希望が持てない生徒たち。そんな彼らがクロスカントリーと出会ったことで少しずつ人生に対する向き合い方が変わってきます。ジムの変化も見どころですが、なによりマイノリティの生徒たちが、“走ること”で貧困や差別と闘う姿が文句なしに感動的です。

また、変わっていくのはジムの奥さんや娘たちも同じ。貧しくともアットホームなヒスパニック系の隣人たちの善意に触れて、彼女たちも、物質的な豊かさよりも遥かに価値のあるものに気づいていきます。

この作品は、単なる一発逆転のサクセスストーリーではなく、彼らの成長の物語。だからこそ、観る者の心を揺さぶるんだと思います。

演出的には、生徒たちの置かれている環境の過酷さを丁寧に描いているところがいいですね。登校前、下校後のキツイ農作業、それでも一向に豊かにならない暮らし。貧困から抜け出すためには教育しかないのに、家が貧しいために大学への進学ができず、結果、親と同じ低賃金労働者として生きていくか、悪事に走ってムショ暮らしかという負の連鎖。それでも“走ること”に希望を見出した彼らは、みんな明るく逞しい。生まれて初めての海ではしゃぎ回る彼らのキラキラした笑顔が忘れられません。

ケビン・コスナーもハマリ役ですね。“ちょっと偏屈で不器用だけど根は優しいオッサン”という彼の雰囲気は、こういうヒューマンドラマにぴったりだと思います(「ドリーム」の役柄もそんな感じでしたね)。

これは1987年の実話。エンドロールに流れる生徒たちの今を見て、“あぁ、みんな立派になって”と感無量です。

ディズニー、スポーツもの、実話というジャンルなら、「グレイテスト・ゲーム」、「クール・ランニング」、「アイアン・ウィル」なんかが好みですが、これも好きな一本です。