お気楽CINEMA&BOOK天国♪

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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

BOOK(現代小説)

🔴本「遠くの声に耳を澄ませて」/宮下奈都(新潮文庫)感想*雲間から差し込む一筋の光を見るような小説*レビュー4.2点

遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫) 【凛として潔いヒロインたち】 旅をモチーフにした12の物語。 テクニカルな部分では、物語の登場人物が別の物語で再登場する趣向が面白いですね。物語ごとに場所や時間軸の設定が異なっているので、それぞれの登場人物を…

🔴本「dele ディーリー」/本多孝好(角川文庫)感想*期待以上でも以下でもないけれど、安定の面白さ*レビュー3.8点

dele (角川文庫) 【ヤバいデータはお早めの削除を】 誰にでも墓場まで持って行きたい秘密の一つや二つはあると思います。本人がそれを胸の裡に秘めている限りは、死んでしまえばそれまで、永遠の秘密になる訳ですが、それをパソコンやスマホにデータとして残…

🔴本「麻雀放浪記1 青春篇」/阿佐田哲也(文春文庫)感想*“朝だ〜、徹夜だ〜”の阿佐田哲也が描く異色のピカレスク・ロマン*レビュー3.9点

麻雀放浪記〈1〉青春篇 (文春文庫) 【ザ・昭和の香り】 ルールを覚えたら身の破滅……そんな自己防衛本能が働いて、麻雀は結局覚えずじまい(その分パチンコにはハマったけど……アホですね)。 この作品、配牌図まで示してあってかなり親切なんですが、残念なが…

🔴本「夜の木の下で」/湯本香樹美(新潮文庫)感想*湯本文学の一つの到達点を示す珠玉の短編集*レビュー4.4点

夜の木の下で (新潮文庫) 【湯本文学の到達点を示す短編集】 表題作の「夜の木の下で」外5篇を収録した短編小説集。 これぞ文学。静謐で瑞々しく、香気漂う名篇ばかりです。 遠く過ぎ去った日の忘れがたい記憶(原体験)を繊細な筆致で情感豊かに描いたこの…

🔴本「ポトスライムの舟」/津村記久子(文春文庫)感想*がんばれ!働く女性たち*レビュー4.0点

ポトスライムの舟 (講談社文庫) 【生きづらさに悩む女性たちへの応援メッセージ】 第140回芥川賞受賞の表題作外一篇を収録。 津村さんは、「とにかくうちに帰ります」 以来のファンです。 先日購入した「ポースケ」が「ポトスライムの舟」の後日譚だと知って…

🔴本「十六夜荘ノート」/古内一絵(中公文庫)感想*満月が欠けはじめる十六夜の月に託した大伯母の想い*レビュー4.4点

十六夜荘ノート (中公文庫) 【十六夜の月に託した想い】 古内さんは「フラダン」以来。「フラダン」も良かったけど、この作品はそれ以上の秀作。 作風は原田マハふう、作品は「小さいおうち(中島京子)」と「世界の果てのこどもたち(中脇初枝)」を足して…

🔴本「災厄」/周木律(角川文庫)感想*未曾有の危機に立ち向かう人々の矜持を描いたパニックサスペンス*レビュー3.8点

災厄 (角川文庫) 【未曾有の危機に立ち向かう人々の矜持】 ストーリーが面白く展開もダイナミックで、一気に読ませるパニックサスペンス。 化学兵器や生物兵器がニュースの俎上に上るこの頃だけに、こういった未来もあり得るかも、という説得力を感じます。 …

🔴本「プロパガンダゲーム」/根本聡一郎(双葉文庫)感想*驕るなマスメディア!ネット世代の爽快な反乱*レビュー3.9点

プロパガンダゲーム (双葉文庫) 【驕るなマスメディア!】 “偏向報道”、“情報操作”、“フェイクニュース”などの言葉を最近よく見かけるようになりました。 本当のところは、どうなんでしょうか?まあ、そもそも“事実”と“事実の評価”がグチャグチャになってる…

🔴本「雪には雪のなりたい白さがある」/瀬那和章(創元推理文庫)感想*優しさよりも切なさが勝る、ほろ苦い短編集*レビュー4.0点

雪には雪のなりたい白さがある (創元推理文庫) 【孤独に向き合うということ、人と繋がるということ】 洒落たタイトルに惹かれて読んでみました。公園を舞台にした、優しくて切ない全五話の物語。登場する公園は、港の見える丘公園(第一話)、あけぼの子ども…

🔴本「透明カメレオン」/道尾秀介(角川文庫)感想*うーん。イマイチ乗れない感涙⁉小説*レビュー3.7点

透明カメレオン (角川文庫) 【ちょっと苦手なタイプの主人公】 確か、数年前「王様のブランチ」で特集が組まれた作品だったような……。ちょっと苦手意識のある道尾作品ですが、ブランチ推薦ということで読んでみました。 結果は……「フツーかな」という印象。“…

🔴本「たゆたえども沈まず」/原田マハ(幻冬舎)*2018本屋大賞ノミネート作品その3*感想&レビュー4.1点

たゆたえども沈まず 【天才画家の内面に肉薄した力作】 開高健が愛した名句『漂えど沈まず』は彼自身のオリジナルかと思っていましたが、語源はパリ市の紋章に刻まれたラテン語だったんですね(Fluctuat nec mergitur……セーヌの荒れ狂う波の中にあっても、舟…

🔴本「残業税」/小前亮(光文社文庫)〜リアルなシミレーションのお仕事小説〜レビュー4.0点

残業税 (光文社文庫) 【リアルで真面目なお仕事小説】 国あるところ税あり、税あるところ脱税あり……これは神代の昔からの鉄則のようです。この小説は、誰もありがたいと思わない“税”と、その“税”の徴収に使命感を燃やす税務署職員にまつわるお話です。 同じ…

🔴本「満天のゴール」感想*人が人を想うこと〜涙腺崩壊の感動本*藤岡陽子(小学館)レビュー4.4点

満天のゴール 【人が人を想うこと〜涙腺崩壊の感動本】 やっぱり読書っていいですね。この本を読むと、しみじみとそう思います。 作者は現役のナースとか。僻地医療の厳しい現実や人の生死の重みがリアルに胸に迫ってくるのはきっとそのせいなのでしょう。少…

🔴本「ピンザの島」感想*出口のない若者の究極の選択*ドリアン助川(ポプラ文庫)レビュー3.9点

([と]1-3)ピンザの島 (ポプラ文庫) 【出口のない若者の究極の選択】 生きることの意味を真摯に問い続ける作家、ドリアン助川の力作長編。 ピンザとは沖縄の宮古島でいうヤギのこと。南の島の美しくも厳しい自然の中で育まれる主人公とピンザとの温かい交流が…

🔴本「春、戻る」感想*“文は人なり”……作者の優しい人柄が偲ばれる*瀬尾まいこ(集英社文庫)レビュー3.8点

春、戻る (集英社文庫) 【相変わらず、ほっこり】 瀬尾まいこの作品は、いつもギスギスした気分を和らげてくれる。 けっこうシビアな状況も描いているのだが、どこかおっとりとした雰囲気があって、トゲトゲしさを感じない。 “文は人なり”……作者の優しい人柄…

🔴本「十八の夏」感想*けっこう好きなタイプの小説*光原百合(双葉文庫)レビュー4.1点

十八の夏 新装版 (双葉文庫) 【けっこう好きなタイプの小説】 花(『朝顔』『金木犀』『ヘリオトロープ』『夾竹桃』)をモチーフにした4短編を収録した作品集。 書店のコーナーでは“10代にオススメ”と紹介されていたが、もう少し上の世代向きだろう。 装丁…

🔴本「武曲」感想*武道の真髄に触れる剣豪小説*藤沢周(文春文庫)レビュー4.0点

武曲 (文春文庫) 【武道の真髄に触れる剣豪小説】 剣道に魅入られた男たちの成長と再生を描く現代版剣豪小説。圧倒的筆力で描かれる立ち合いシーンが圧巻。 【あらすじ】 剣道に挫折した矢田部研吾は、アルコール依存で失職し、今は、警備員をしながら高校剣…

🔴本「55歳からのハローライフ」感想*男は過去に囚われ、女は今を生きる*村上龍(幻冬舎文庫)レビュー3.9点

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫) 【男は過去に囚われ、女は今を生きる】 格差社会のシビアな現実の中で、人生の再出発を果たそうとする中高年の苦闘を描いた中編5作を収録した作品集。 【感想・レビュー】 孤独、貧困、夫婦の不和、体力の衰え、老いら…

🔴本「ふるさと銀河線 軌道春秋」感想*一言で言えば、“人肌の温もり”が感じられる作品*髙田郁(双葉文庫)レビュー4.0点

ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫) 【今を生きる人々への優しいエール】 今を懸命に生きる人々の日々の哀歓を、鉄道をモチーフにして綴った9篇の短編集。 どの作品も、ささやかで、奥ゆかしく、切なくて、温かい。結構、好みのテイストではある。 【あら…

🔴本「スウィート・ヒアアフター」感想*作者の全肯定の態度が、読む者に静かな安らぎをもたらす良心的一作*よしもとばなな(幻冬舎文庫)レビュー4.0点

スウィート・ヒアアフター (幻冬舎文庫) 【作家の良心を感じる物語】 一人の若い女性の喪失と再生の物語。 作者の全肯定の態度が、読む者に静かな安らぎをもたらす良心的一作。 【あらすじ】 交通事故で瀕死の重症を負った小夜子は、何とか一命をとりとめる…

🔴本「終電の神様」感想*世の中が荒んで他人が信じられない時代だからこそ、一読の価値のある一冊*阿川大樹(実業之日本社文庫)レビュー4.2点

終電の神様 (実業之日本社文庫) 【作品紹介〜電車にまつわる謎と奇跡の物語】 満員電車で痴漢に遭う女装の男(『化粧ポーチ』)。納期に追われる中、有給を命じられたIT企業戦士(『ブレークポイント』)。筋肉バカの競輪選手とのすれ違いの恋に悩むキャリア…

🔴本「ファースト・エンジン」/未須本有生(集英社文庫)*松本清張賞受賞作家による“ものづくり小説*レビュー4.0点

ファースト・エンジン (集英社文庫) 【ものづくりの誇り】 戦闘機の新型エンジン開発に賭ける技術者たちの苦闘を描いた、松本清張賞受賞作家による“ものづくり小説”。 【あらすじ】 エンジンメーカーで戦闘機に搭載する超音速エンジンを開発するプロジェクト…

🔴本「デフ・ヴォイス」/丸山正樹(文春文庫)*自分と他者との違いを理解し、受け容れる対人関係の基本が学べる一冊*レビュー4.5点

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫) これは久々の掘り出し物!(巷ではかなり反響を呼んだらしいが、全く知らなかった)。「心が震える」という言葉がピッタリの感動作。こんな良心的な作品が本屋大賞などにノミネートされると本当に嬉しいのだが………

🔴本「こっちへお入り」/平安寿子(祥伝社文庫)*読むと何だか得した気分の一冊*レビュー4.1点

こっちへお入り (祥伝社文庫) この小説には勢いがある。モチーフが「落語」なだけに、文章の歯切れが良くて、話のテンポもいい。励まされ、元気が出る上、落語にまつわる様々な薀蓄も楽しめて、何だか得した気分の一冊。 【あらすじ】 本作は、彼女33歳独身O…

🔴本「コーヒーが冷めないうちに」/川口俊和(サンマーク出版)*2017年本屋大賞のノミネート作!希望が沸いてくる作品*レビュー4.2点

コーヒーが冷めないうちに 地下の狭い喫茶店、少数の登場人物、カウベルや柱時計などのごく簡素なセット(この物語は、時間移動だけで空間移動はない)……なるほど、いかにも舞台劇の演出家らしい(物語)設計だと思う。 【登場人物】 登場人物は、恋人に別れ…

🔴本「桜風堂ものがたり」/村山早紀(PHP)*人として大切なことを教えてくれる作品*レビュー4.4点

桜風堂ものがたり 物語が終わってしまうのが名残惜しくて、残りのページ数を気にしながら本を読んだのは、いつ以来だろうか。これは人を幸せな気持ちにしてくれる本。もし自分が書店員だったら、きっと、POPを作って店の一番目立つ所に並べていることだろう…

🔴本「彼が通る不思議なコースを私も」/白石一文(集英社文庫)*生きることの意味を考えさせられ、未来への希望を繋ぐ良心的一冊*レビュー4.0点

彼が通る不思議なコースを私も (集英社文庫) 第一感は、清潔感のある、とても感じがいい作品という印象。生と死、仕事と家庭、恋愛と友情など、身近でありふれた問題を、生真面目に描いているところに好感が持てる。 【ストーリー】 本作は、不思議な運命で…

🔴本「盤上の夜」/宮内悠介(創元SF文庫)*ただただお見事と言う他ない文句なしの一作*レビュー4.4点

盤上の夜 (創元SF文庫) 宮内悠介の作品は初めて読んだが、正直、驚いた。テーマの壮大さといい、散文と詩が一体化したような文章といい、卓抜なストーリーテイリングといい、ただただお見事と言う他ない。新たな才能に出くわした時の新鮮な驚きと喜びを感じ…

🔴本「週末カミング」/柴崎友香(角川文庫)*今を懸命に生きる若い女性にオススメ*レビュー4.2点

週末カミング (角川文庫) ごく普通の人々の日常を描き続ける作家、柴崎友香の、「週末」をテーマにした短編8篇を収録した作品集。 【作家について】 この作家もまた魅力的。劇的な出来事などなくても、少し視点を変えれば、日常は驚きと慈しみに満ちている…

🔴本「月の上の観覧車」/荻原浩(新潮文庫)*「上海租界の魔術師」は、文句なしの出来*レビュー3.5点

月の上の観覧車 (新潮文庫) 昨年直木賞作家となった荻原浩の短編8篇を収録した作品集。 【感想・レビュー】 多くの作品が中高年の喪失感を扱って同世代の人間にとっては見につまされる切なさがある。ただ、余りにも感傷的で、やりきれない気分にもさせられ…