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🔵映画「はじまりのボーイミーツガール」/(2016フランス)感想*フランス版“小さな恋のメロディ”*レビュー4.3点

はじまりのボーイミーツガール DVD

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【心が浄化されるピュアな映画】

なんて素敵な映画!

瑞々しくて、微笑ましくて、ちょっぴり胸が疼いて……抱きしめたくなるような映画ですね、コレは。

少年と少女の淡い初恋、父と子の絆、男の子同士の厚い友情、少年のほろ苦い想い、少女の夢への挑戦……全てが12歳の子どもたちの世界。それを子ども目線で素直に描いているところが素敵です。情感溢れるチェロの旋律と彼らの生き生きとした日常を捉えた映像とのシンクロも鮮やか。

無垢の魂に触れて、自分の心も浄化されたような気分になる一作です。

【あらすじ】

12歳のヴィクトールは同じクラスのマリーに憧れている。しかし、落ちこぼれのヴィクトールにとって優等生のマリーは高嶺の花、いつも遠くから眺めるだけの存在だった。

ところがこの頃、マリーの方から積極的なアプローチが。不思議に思いつつも有頂天のヴィクトール。二人はすぐに仲良くなるが、マリーはヴィクトールに言えない大きな秘密を抱えていた。

その秘密に気付いたヴィクトールは、自分がマリーに利用されていたことを知り、マリーと絶交する。

しかし、何があっても夢を諦めないマリーの情熱に動かされ、ヴィクトールはマリーを支えようと決意する……。

【感想・レビュー】

深刻なテーマを扱っていながら、明るく前向きな気持ちにさせてくれる映画。深刻さを救っているのは、やっぱりフランス流の粋とエスプリでしょうか。

ヴィクトールと父親との会話がふるっています。『愛してるかどうかどうやって分かるの?』と聞いてくる息子に『愛は目に表れる。目を見りゃわかる。よく覚えとけ。目は愛の物語の第一章だ』。マリーが嘘をついたと非難する息子に『ウソのない恋なんて恋じゃない』……。

貧しい自動車修理工のオヤジだけど、悩める息子にこんな気の利いたアドバイスができるなんて、カッコいい父親ですね。まだ幼い我が子を一個の人格として尊重する態度も素晴らしいと思います。それでいて、亡くなった?妻をいつまでも忘れられない弱い一面も。ヴィクトールに促されて遺品をバザーに出すときのためらいの表情に妻への深い想いが覗いて、思わずうるっときてしまいます。

一方、マリーの父親はかなりわからず屋ふう。今しか見えない12歳の子どもの視点で見ると、確かに独善的に映るかもしれませんが、娘の将来を案じる父親の視点で見ると、娘の夢より病気の治療を優先するのは当然の事。この父親の葛藤も痛いほど分かります。

オヤジって辛いですね……ということで、この映画、ヴィクトールとマリーの初恋が軸にはなっていますが、父親たちの強さと弱さを繊細に描いているところも見どころの一つかと思います。

意地っ張りで健気なヴィクトールと天真爛漫で小悪魔的なマリーの二人が初々しくてキュート、しかもストーリー展開にわざとらしさがなく(深刻な話なのに“お涙頂戴”に流れないところがフランス流?)、音楽と映像のシンクロもバッチリ。総じて、“監督の瑞々しい感性が光る青春映画の佳作”と言ってよいかと思います。

あと、忘れられないのが、いつもヴィクトールを励ましてくれる格言好きの親友。父親はイスラム教、母親はユダヤ教、お祈りは週ごと代わりばんこというブッ飛んだ家庭も笑わせてくれますが、何と言っても、ヴィクトールの無謀な計画を全力で応援するその侠気(おとこぎ)が見上げたもの。GJです!大人社会へのレジスタンスを描いた「小さな恋のメロディ」のガキ大将・オーンショーを彷彿とさせるこの親友、この映画一番の強キャラだと思います。

ちなみに、12歳にして男を振り回す小悪魔マリーに扮するアリックス・ヴァイヨは、将来を嘱望されるヴァイオリニストだとか。利発で育ちの良さそうな雰囲気なのも、それで納得です。