お気楽CINEMA&BOOK天国♪

お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴本「賢者の贈りもの」感想*やっぱり人の感情に流行り廃りはない*O・ヘンリー(新潮文庫)レビュー4.2点

賢者の贈りもの: O・ヘンリー傑作選I (新潮文庫)

賢者の贈りもの: O・ヘンリー傑作選I (新潮文庫)

【手練の短編作家が描く人生の妙味】

泣き笑いのツボを外さない短編の名手O・ヘンリーの表題作外15の作品を集めた傑作短編集。

100年以上も前に書かれた作品なのに、古さを全く感じさせないところが凄いと思います。古典落語の人情咄が廃れないのと同じように、やっぱり人の感情に流行り廃りはないってことなんでしょうね。

【あらすじ・感想・レビュー】

以前読んだことがあるからか、それとも、似たような話をどこかで聞いたことがあるからか、途中からオチが想像できる作品がいくつかありますが、O・ヘンリーの凄いところは、それでも十分面白いということです。

この短編集、題材が、ロマンスもの、人情もの、悪漢ものなど幅広く、登場人物も、金持ち、貧乏人、エリート、労働者など多彩で、飽きることがありません。内容も、起承転結のバランスがよく(中には前置きの長さに閉口する作品もありますが)、どれをとってもオチの鮮やかは見事の一言です。また、大胆な比喩、誇張などを駆使したシニカルな文体も、この作家ならではのペーソスを醸し出しています。

イチオシ作品を挙げるとすれば、『賢者の贈りもの』、『水車のある教会』、『千ドル』あたりでしょうか。『賢者の贈りもの』は、互いの一番大切なものを売り払って、とんちんかんな贈り物を交換する貧乏な若夫婦を描いた物語。夫も妻も、相手が今一番欲しがってる物を知っているところが素敵です。ちょっとベタですが、大切なのは物より愛、愛の価値を知ってる人は、確かに賢者と言えるのかもしれません。『水車のある教会』は、生き別れになった父と娘の奇跡的な再会を描いた物語。トシを取ると、人の善意が報われる話が一番グッときます。『千ドル』は、愛する人に莫大な遺産を譲ろうと画策する青年の無償の愛を描いた物語。これも泣けます。

やっぱりO・ヘンリーはいいですね。彼の人を見る眼の優しさは、通り一遍の(お節介じみた)優しさと違って、深い諦念や絶望を味わった者だけが持つ優しさのように感じます(服役、離婚などの辛い人生経験の影響?)。どこからともなく、“人間だから、しょうがないよね”という彼の声が聞こえてくるような気がして、ちょっとホッとします。