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🔵映画「この森で、天使はバスを降りた」感想*良くも悪くもアメリカらしい作品*(1996アメリカ)レビュー4.1点

この森で、天使はバスを降りた [DVD]

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【アメリカのヒューマニズム】

タイトルのイメージと違って、シリアスで濃厚なヒューマンドラマです。ストーリーはシンプルですが、なかなか吸引力のある映画だと思います。

感想を一言で言えば、“いかにもアメリカ的”という感じでしょうか。良くも悪くもアメリカ映画らしいなあと思います。

 【あらすじ・感想・レビュー】

ある冬の夜、人生をやり直すために北部の小さな田舎町のバス停に降り立ったパーシー。彼女は、町のレストランで働き始め、レストランの店主ハナ、近所の主婦シェルビーらと親交を深めていく。やがて、パーシーの純粋な優しさは周囲の人々の心を解きほぐし、自身の心の傷も次第に癒やされていくのだが……。

テーマは“癒やし”、あるいは“贖罪”。内容は少し地味ですが、知らず知らず惹き込まれてしまう映画です。

パーシーの過去が明らかになるにつれ、気持ちが重くなっていきますが、その重さも彼女の純粋さやシェルビーの優しさ、森の風景の美しさなどに触れて救われます。初めは、前科者のパーシーがなんで天使?と思うのですが、彼女の献身的な行動を見ていると、なるほど、と納得します。そんなパーシーに感化されたシェルビーも好印象です。夫のいいなりになっていつもオドオドしていた彼女が、パーシーと出会ったことで強くなります。彼女の変化(人間的成長)は微笑ましくもあり、励みにもなります。その辺りを丁寧に描いた序盤、中盤はかなり良い出来だと思います。

……それにしても、余所者に対する田舎町の住民の下世話な好奇心や露骨な偏見、一旦打ち解けた後の(打って変わった)フレンドリーな態度などを見るにつけ、アメリカ人って、偏狭なのか寛大なのかよく分からんなあ、と思ってしまいます(これこそ偏見?)。

そして、最も分かりにくいのが、この映画の結末です。息子への盲目的な愛からパーシーの純粋な真心を踏みにじったハナ、パーシーへの妬みから彼女を罠に嵌めたシェルビーの夫……彼らのその後を見ていると、失われたものと得られたものバランスの悪さに苦々しい思いします(もう少し罪の意識があって然るべきでは、という思いもあります)。もしかすると、この監督、“二人とも、最後はパーシーの存在で救われたのだから、救われた人を許すのもヒューマニズムだろう”という考えなのかもしれません。仮にそうだとしたら、アメリカのヒューマニズムって少し安っぽくないか、と言いたいところです。

……というわけで、この映画、真面目に作られた良心的な秀作だとは思うのですが、ややご都合主義的?な結末が引っ掛かります。……私が少しパーシーに入れ込みすぎているのかもしれませんが。