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🔵映画「ライオン 25年目のただいま」感想*故郷を喪失した青年の自分探しの旅*(20016オーストラリア外)レビュー4.0点

LION /ライオン 25年目のただいま(字幕版)

LION /ライオン 25年目のただいま(字幕版)

【故郷を喪失した青年の自分探しの旅】

インドでは、毎年8万人もの子どもが行方不明になっているとか。いくらカオスの国だからって、あんまりの数字です。日銭を稼ぐために重労働をする子どもたちや汚れた身なりのストリート・チルドレンの姿を目の当たりにすると、胸が痛みます(『スラムドッグ&ミリオネア』を思い出します)。大人の世界はどうにもならないとしても、せめて子どもたちにとっては居心地の良い世界であってほしいと思うのですが……。

 【あらすじ・感想・レビュー】

5歳の時、兄とはぐれて迷子になったサルーが、孤児院生活などを経てオーストラリアの養親の元に引き取られ、20年後、夢にまで見た母国インドの家族との再会を果たすまでを描いた実話に基づく伝記ドラマ。

サルーは、養親の元で何不自由なく成長しますが、長じるにつれ望郷の念に苛まされ、幼児期の断片的な記憶を頼りに、グーグル・アースを使って必死に故郷を探し出そうとします。そして、遂にその執念は実りますが、彼を長期間支え続けたのは、母国で自分の帰りを待ち続けているであろう実母への思慕の念と、“自分は何者なのか”という根源的な疑問だろうと思います。その意味でこの映画は、サルーの自分探しの旅を描いたものとも言えそうです。

そして、この映画がもう一つ描きたかったのは、母親の我が子への愛だろうと思います。サルーがいつか戻って来ると信じて故郷の村から離れようとしなかった実母と、立派に成長した息子の姿を一刻も早く実母に見せてあげたいと願う養母……どちらの愛も貴いと思います。養母とサルーの初対面のシーンと、実母とサルーの再会のシーンは、何度観ても泣かされます。

ただ、一点理解できなかったのが、子どもをあえて産まず、養子を迎えた養母の気持ちです。彼女は、サルーの問いにこう答えます……『世界中に人があふれてる。子どもを産んで世界がよくなる?恵まれない子たちを助ける方が、意義がある』……ここは泣くところなのかもしれませんが、この考え方(キリスト教的博愛主義?)は理解しかねます。昔ある本(確かドストエフスキーだったような……)で『人間が神の摂理に反して行えるたった二つのこと。それは自殺することと子を産まぬこと』という一文を読んだ記憶があります。自然の摂理、あるいは神の摂理に反して、あえて子を産まず他人の子を育てることが本当に意義深いことなのか、その点は、私自身はやや疑問に感じます。

もちろん、動機が自分に理解できないからといって、養母の純粋な真心や貴い行為を否定する気は毛頭ありません。実際、他人の子どもを我が子同様に育てるなんて誰にでもできることではないし、偽善で子育てができるほど甘いものではないことも重々承知しているつもりです。……で、結論として、この映画は、養母の愛がホンモノだからこそ成立した映画と言えると思います。