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🔴本「たまうら〜玉占〜」感想*幸せに生きるための秘訣を教えてくれる*星乃あかり(小学館文庫)レビュー3.5点

たまうら: 玉占 (小学館文庫)

たまうら: 玉占 (小学館文庫)

【幸せに生きるための秘訣】 

分かりやすい文章で内容もライト、気楽な気分でサクサク読めるエンタメ時代小説(ジャンル的にはファンタジーでしょうか)。

この小説のターゲットはたぶん若年層だろうと思いますが、これを幸せに生きるための秘訣を描いた寓話として読めば、年寄りでも結構愉しめるのかなと思います。

【あらすじ・感想・レビュー】

「たまうら〜玉占〜」という行灯を掲げて、どこからともなく現れる不思議な老婆。どんな望みも叶えてくれるという老婆の玉占いによって劇的に人生が変わってゆく5人の男女を描いた全5話の作品集。

色男との結婚を夢見る若い娘(『みれん玉』)、一度は本気の恋がしてみたい年増の女(『やっかい玉』)、主君の理不尽な命に逆らえない臆病な侍(『びびり玉』)、物忘れがひどい商家の跡取り息子(『忘れ玉』)、金持ちになって贅沢がしたい強欲老婆(『よくばり玉』)……という5人の悩める男女が主人公。好みはいろいろでしょうが、個人的には、『忘れ玉』か『よくばり玉』がオススメかなと思います。

『忘れ玉』は、物忘れがひどい商家の跡取り息子が玉占いの老婆から借りた“忘れ玉”によってたちまち秀才に変貌し、憧れのおりんちゃんの信頼を勝ち得るが、頼みの忘れ玉を他人に貸したことからその神通力が消え失せて……というストーリー。『よくばり玉』は、貧乏で強欲な老婆が“よくばり玉”を手にして以来、使ったら使った以上のお金が舞い込むようになり、仕方なく人助けのためにお金を使っているうち、お金より大切なものに気付いていく……というストーリーです。

どちらもふんわりと柔らかい人情噺ではありますが、“欲を抑え、高望みをせず、足ることを知れば、心の平穏が得られる”という教訓を描いた寓話でもあります。多少ツッコミどころはありますが、ファンタジーにツッコむのも野暮というもの。愉しく読んで浮世の憂さを晴らすのがこの手の小説の正しい読み方かと思います。

……しかし、たまうらの助手?のふとっちょ猫“大福”に比べると、主人である老婆のインパクトが弱く、若干魅力に欠ける気がします。そこが惜しいところです。