🔵映画「イップ・マン 継承」/(2016中国, 香港)感想*泣けるカンフー映画*レビュー4.2点
【奥さんがキレイ……】
中国武術・詠春拳の達人イップ・マンの活躍を描くシリーズ第三弾。
前二作(「序章」、「葉問」)はすっ飛ばして最新作「継承」から。
いやぁ、面白い映画ですね。イップ・マンの至誠の生き方を軸に、迫真のカンフーアクションから涙を誘う夫婦愛まで盛り込んだ、見応えのある105分。
伝統武術の無駄のない動きって、力強くて優雅で美しいものだと改めて分かりました。イップ・マンの奥さんもめっちゃキレイだし、これは満足の一本です。
【あらすじ】
舞台は好景気に沸く1959年の香港。
裏社会を牛耳る不動産王・フランクは、土地再開発の利権を狙ってイップ・マンの息子が通う小学校の土地に目を付ける。フランク一味が悪辣な地上げ工作を繰り返していることを知ったイップ・マンは、自警を買って出て、何度も手下たちを蹴散らかす。
業を煮やしたフランク一味は、イップ・マンの息子らを攫って揺さぶりをかけるが、同門の武術家、チョン・ティンチの手助けもあって、子どもたちは無事保護される。
ちょうどそんな頃、イップ・マンの妻が癌に冒され余命幾ばくもないことが発覚する。
これ以上家族を危険に晒せないと悟ったイップ・マンは、フランクに一対一の闘いを挑む。一方、不遇の天才武術家チョンは、自分こそが詠春拳の正統の後継者と喧伝して、イップ・マンに挑戦状を叩きつける。
果たしてイップ・マンは、彼らとの死闘を制して、人生で最も大切にしているものを守り通すことができるのか……。
【感想・レビュー】
かのブルース・リーの師にして、誠と誇りの人、イップ・マン。劇中の次の台詞が彼の高潔な人柄を最もよく表していると思います。
……『社会は不公平 だが人間は平等であるべき 統治者が尊いとは限らない 貧者が卑しいとは限らない 世界を動かすのは金持ちや権力者ではなく 心ある者だ』
世界の横暴な為政者たちに聞かせてやりたい言葉ですね。
ドニー・イェンの物静かで穏やかなイメージがホントに役柄にぴったり(何となく先頃亡くなった加藤剛さんのイメージとカブるんですが……)。しかも、ドニーのアクションシーンでの動きが流れるようにスムーズなので、いかにも真の達人といった雰囲気が滲み出ています。
しかし、マイク・タイソンとの闘いはちょっとご愛嬌でしたね。元ベビー級世界チャンピオンの顔を潰す訳にもいかず、かといって負ける訳にもいかずということで、扱いに困ったのか、ぎりぎりセーフの展開。やや消化不良なので、ここは、”タイソンなんて誰が引っ張って来たんだ!”と嫌味の一つ位は言っておきたいところです。
まぁ、その分、チョンとの死闘で溜飲は下がりますが。お約束の掛け合いとはいえ、スピード感溢れる瞬時の攻防は見事の一言。なかでも刀剣での闘いは半端なくスリリングです。私怨や遺恨ではなく、賭けるものは誇りだけ。純粋に道を極めんとする者同士の闘いって、やっぱりカッコいいですね。観ていて気分が高揚します。
男同士の死闘にも増して印象的なのは、イップ・マンとウィンシンの夫婦愛。無骨な夫と優美な妻の最期のダンスシーンや妻が夫の闘いを静かに見守るシーンなどは、仲睦まじい夫婦の心情が滲み出て、胸を打たれるものがあります。
リン・ホンってホントに素敵な女優ですね。スラリとした長身で優雅な立ち居振る舞い、どことなく儚げな表情がとても印象的な女性です。
考えてみると、しみじみとした夫婦愛を謳ったカンフー映画というのも珍しいのかもしれませんね。その試みはリン・ホンの魅力によって十分成功しているように思います。