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🔴本「つよく結べ!ポニーテール」/朝倉宏景(講談社文庫)感想*野球少女のひたむきな想いに涙する一冊*レビュー4.2点

つよく結べ、ポニーテール (講談社文庫)

つよく結べ、ポニーテール (講談社文庫)

【ひたむきな想いの強さと美しさ】

ポニーテール……学生の頃、ポニーテールでジルバ(古っ!)を踊るキュートな女の子を見て以来、ポニーテールは永遠の憧れ、「ポニーテール偏愛論」でも書いてみようかなと思う位のアブない思い入れがありますw

ということで、タイトル買いの一冊(ほとんど条件反射!)。

しかし、蓋を開けてみると……これは良書です。ヒロインのひたむきな想いに胸を打たれて、泣けました。

いくつになっても本から学べること、本から得られるものって大きいですね。そうしみじみ思い知らされた一冊です。

【あらすじ】

両親の心配をよそに、プロ野球選手を夢見て日々トレーニングに励む熱血野球少女の真琴。

小学校時代、キャッチボールが縁で同級生のタクト君と仲良しになり、中学時代は、男子に交じって野球部に所属、少しずつピッチャーとしての可能性を広げながら、野球少年の龍也や美術部の雫らと親交を深めていく。

そして、タクト君との約束を胸に強豪野球部を擁する高校へ進学。しかし、待ち受けていたのは厳しい現実だった。

体力のない真琴は、練習についていくのが精一杯、試合に出るチャンスももらえず、ほとんどマネージャー扱いに。そんな真琴をいつも温かく見守り、さり気なく気遣うチームメイトの龍也……。

二人の距離は徐々に縮まっていくが、そんなときに、野球部で前代未聞の不祥事が発生する。そして、その影響でチームの結束は乱れ、真琴もいわれのない誹謗中傷を浴びて追い詰められていく。

それから6年……真琴はついにプロ野球公式戦のマウンドに立つ。その姿を見守る龍也や雫らの胸に去来する想いとは……。

【感想・レビュー】

プロ野球選手を目指す一人の野球少女の小学校時代からプロのマウンドに立つまでの成長の軌跡を描いた青春小説。

幼い頃から真っ直ぐで心優しい真琴。貧しい母子家庭の子・タクト君との束の間の交流は、切ないけれど強く心に残ります。真琴から将来の夢を聞かれて、“立派なおとなになりたい”と答えるタクト君。いじらしくて涙が出そうです。

この世界に在る、“本当に善いもの”、“本当に美しいもの”に触れることなく育った子どもは不幸だと思います(それは、信じられるものがないことを意味しています)。そして、タクト君もその一人。しかし、彼は真琴と出会ったことで変わります。たぶん彼女の美しい心に触れて、信じられるものが現に在ることを知ったんだろうと思います(そう考えてみると……暴走族の少年たちは、“星を見に行ってるんだ”と思いたいところです)。

その後、10年の時を経て再会した二人。この場面は、歳月を経てもなお色褪せない想いがあることを信じさせてくれる、本作最高の名場面だと思います。

つい我が身を顧みて、自分は真琴のように人に優しくして来れたんだろうか、タクト君がいう立派なおとなになれたんだろうか、といった思いに駆られ、忸怩たる思いがします。子どもって純粋なだけに教えられることが多いですね。

……といっても、タクト君以外の男どもはほとんどしょうもない奴ばかり。この本を途中何度か挫折しかかったのはそのせいです。真琴に対するネットの誹謗中傷も理不尽極まりなくて、(安全なところから他人を叩きまくる昨今の風潮を思い出して尚更のこと)、ひどくムカつきます。

この物語は、真琴と龍也の回想が交差する形で進行しますが、龍也というキャラにあまり魅力がないだけに「龍也23歳」の章は必要なかったような気がします。むしろ真琴とタクト君の関係をメインにした方がよかったように思えるのですが……。

と、なんだかんだ言ってますが、これも真琴への想い入れの強さゆえ。途中の閉塞感がひどかっただけに女子プロリーグに入ってからの真琴の活躍は気分爽快。読後感がなんとも心地良くて、読んで良かったと素直に思える一冊でした。

蛇足ですが……物語のイメージが漫画『野球狂の詩』とカブってしまいました。映画化されたとき、ヒロインの水原勇気を演じたのは木之内みどり(懐かしい!)。彼女の線の細さは漫画のイメージとぴったりでしたが、真琴はもう少し開けっぴろげで逞しいイメージですね。実写化の際には、稲村亜美ちゃん辺りで検討してもらえると嬉しいなぁなんて思っていますw