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🔵映画「天使と悪魔」/(2009アメリカ)感想*ハラハラドキドキの疾走感と西洋的宗教観の分かりにくさが共存した映画*レビュー3.8点

天使と悪魔 (エクステンデッド・エディション) (字幕版)

天使と悪魔 (エクステンデッド・エディション) (字幕版)

【また再びの疾走感】

ローマ・カトリック教会大阪大司教の前田万葉さんが、先日、ローマ教皇庁(バチカン市国)の枢機卿に任命されたとのこと。なんせ世界12億人の信徒を束ねる枢機卿125人の一人に選ばれた訳ですから、宗教にほとんど関心のない私としても、大変喜ばしく感じたニュースでした。

さて今回は、『オリジン』に引き続いて、ロバート・ラングドンシリーズの『天使と悪魔』。……何か順番が違うような気もしますが、ローマ・カトリックと言えばバチカン、バチカンと言えば『天使と悪魔』、まあ前田さん繫がりということで。

【あらすじ】

バチカンではローマ教皇の死去に伴い、新たな教皇を選出するためのコンクラーべが行われようとしていた。しかし教皇庁ではその裏で、教皇候補となる4人の枢機卿が何者かに拉致され、「8時から1時間おきに枢機卿を殺し、最後にバチカンを滅ぼす」という脅迫を受けていた。

教皇庁から協力を求められた宗教象徴学者ラングドン教授は直ぐにバチカンに飛び、この犯行が、かつてカトリック教会から弾圧された、科学を信奉する秘密結社イルミナティによるものと確信する。そしてスイスから呼ばれたヴィットリア・ヴェトラ博士から、研究中の“反物質”が盗まれたことを聞かされる。反物質はバチカンを一瞬で消滅させるエネルギーを持つという。

4人の枢機卿はどこに拉致され、反物質はどこに隠されているのか。手掛かりはイルミナティのメンバーだったガリレオ・ガリレイの記録にあると睨んだラングドンは、バチカンの国立書庫で記録を調べ、彼らの居場所の当たりをつける。そしてヴィットリアと共に枢機卿と反物質の奪還に向かうのだが……。

【感想・レビュー】

この映画も『オリジン』と同様、テンポがいいですね。ダン・ブラウン作品の特長は“疾走感”ですかね。

展開も二転三転、途中までイルミナティの犯行の動機が全く理解できず、“数百年前の弾圧を根に持っての報復なんて、単なるテロじゃね?”なんて思っていたのですが、黒幕の登場でようやく納得。なるほどこれなら「宗教と科学の対立(と調和)」というテーマも頷ける気がします。

そう考えてみると『天使と悪魔』というタイトルも、宗教(カトリック教会)=天使、科学(イルミナティ)=悪魔といった単純なものではなく、人間(黒幕)の内面の二面性を表したものと解釈するのが妥当なような気もします。偏狭で排他的な信仰心はときに悪魔をも生み出し、その身を滅ぼすというアイロニーなんでしょうね(西洋の宗教観はやっぱり分かりにくい)。

これも当たっているかどうか分かりませんが……「宗教と科学の調和」というテーマが最新小説『オリジン』でも取り上げられているところを見ると、たぶんそのテーマがダン・ブラウンの一丁目一番地(原点)であり、ライフワークなんでしょうね。父親は数学者、母親は宗教音楽家、そして妻は美術史研究者と聞くと、なるほどなあと思います。

で、映画の話に戻りますが、この作品、映像の美しさが印象的です。由緒あるローマの街並みや教会の壮麗な内観などを観光客気分で楽しめて、ちょっと得した気分になりました。また、コンクラーベの舞台裏も垣間見られて、少しはローマ・カトリックへの理解も深まったような気がします。

一点残念だったのは、ヒロインの存在感が薄いところ。(サスペンスとしての面白味は別として)ドラマとしての盛り上がりに欠けるのは、たぶんヒロインとラングドンとの絡みが少なかったせいだろうと思います。