🔵映画「神様の思し召し」/(2015イタリア)感想*勘違いおとうさんの慌てっぷりがとてもキュートなイタリアン・コメディ*レビュー4.0点
【笑いのツボがぴったり】
陽気な笑いとしみじみとしたペーソス、そして分かりやすいストーリー。イタリア人と日本人は笑いのツボが似てるんでしょうか。とても楽しく視聴しました。
老若男女、誰でも楽しめる映画ですが、できればこれは、“できるオトコ”を自認する鈍感なおとうさん方に(日頃の行いの振り返りを兼ねて)観てほしい映画ですね。ついついスルーしがちな大切なことに気付く機会になるかもしれません。まぁ、学ぶ気持ちがあればの話ですが……。
【あらすじ】
手術の腕はピカ一だが、傲慢で毒舌、傍若無人の振る舞いで周囲から敬遠されているエリート外科医のトンマーゾ。妻との関係は冷え切り、能天気な長女は冴えない男と結婚。そんなトンマーゾの唯一の希望は医大に通う優秀な長男だったが、あろうことか長男は家族の前で「医大を辞めて神父になる!」と宣言。
長男の突然の心変わりに驚いたトンマーゾが極秘にその理由を探ると、そこにはカリスマ的人気を誇るピエトロという神父の影が。長男はピエトロ神父に洗脳されている、と思い込んだトンマーゾは、あの手この手で神父に近づき、その正体を探ろうとするが……。
【感想・レビュー】
天才外科医とムショ帰りの神父……コメディとしてはありがちな設定ですが、それでもそのコントラストは面白い。特にトンマーゾの駄目オヤジぶりが最高です。
職場ではパワハラにセクハラ、長男には表向き物分りの良いふりをして、長女には上から目線でモノを言い、妻には全く無関心……と、何か微妙に思い当たるフシがあるような。我が身を振り返ると冷や汗が出ます。いやぁ、お恥ずかしい。
オッサンという生き物が、えてして世間とミスマッチを起こすのは、たぶん妙な自信(大抵は根拠のない自信)を持ってるからだと思います。取り柄は肩書と金だけなのに(肩書も金もないオッサンがエバってたら更に悲惨)。
でも、そんなオッサンが一旦自信を失くしたら、右往左往。トンマーゾの混乱ぶりが笑わせてくれます。
でも、トンマーゾは偉い。ピエトロ神父との出会いによって自分を変えていきます。彼の年になって自分の欠点を認め、考え方や生き方を改めるなんて、なかなかできることではありません(自分の半生を否定するようなもんですから)。人間、成長するためにはいくつになっても“素直であること”が大切なんでしょうね。
結局、幸せは心の持ちよう。守るべきは肩書でも財産でもなく、家族や友人との絆ということになるんでしょうか。トンマーゾが反省して、長女の好きなポップスに聴き入るシーンとか妻に手料理をふるまうシーンとかは(身につまされて?)ちょっとうるっときます。
苦労人のピエトロの人間性も魅力ですが、何と言ってもトンマーゾのキュートさが光る一作。
ラストは賛否が分かれそうですが、この結末もアリですね。まさに「神様の思し召し」。しみじみとした余韻があって良いと思います。