🔵映画「ビスマルク号を撃沈せよ!」/(1960アメリカ)感想*海戦アドベンチャーとしてもヒューマンドラマとしても見応えのある戦争巨編*レビュー4.2点
【意外な掘り出し物?よく出来た戦争映画】
第二次世界大戦中、不沈戦艦と謳われたナチスのビスマルク号とイギリス海軍の艦隊との熾烈な戦いを描いた戦争巨編。
モノクロ映像ながら、ヒトラーが出席した進水式の模様など一部実写フィルムも使用され、巨大な戦艦同士の戦闘シーンなどリアリティがあって迫力十分。
戦争に翻弄される人間の苦悩も丁寧に描かれており、ヒューマンドラマとしても見応えのある作品だと思います。
【あらすじ】
1939年に進水したナチスの最新鋭戦艦ビスマルク号。
傑出したスピードと攻撃力を誇るビスマルク号は、次々と連合国軍の艦を撃破し、不沈戦艦と恐れられていた。
1941年、ビスマルク号はイギリス軍の補給路を断つべく、北大西洋上に出動する。
それを迎え撃つイギリス海軍の作戦責任者はシェパード大佐。彼はかつてビスマルク号の指揮官のリュッチェンス提督に艦を沈められた苦い経験を持っていた。
“いかなる手段を用いてもビスマルク号を撃沈せよ”という首相の檄に応えるべく、シェパード大佐は、イギリス海軍指令本部で昼夜を分かたず迎撃作戦を練る。しかし、性能で優るビスマルク号を仕留めるのは至難の業だった。
苦悩に沈むシェパード大佐をフォローしたのは、婦人部隊の有能な士官アン・デイビスだった。彼女はシェパード大佐に、苦しい時は仲間を頼るべきだと優しく諭す。
そして、リュッチェンス提督の動きを読んだシェパード大佐は、ビスマルク号の捕捉に成功し、国家の名誉と威信を賭けた最終決戦に臨む……。
【感想・レビュー】
これは海戦アドベンチャーとしてもヒューマンドラマとしても見応えのある映画です。
イギリス海軍とドイツ海軍の戦いは、洋上の戦艦同士の激突と、シェパード大佐とリュッチェンス提督との知略戦の二層構造で進行します。
洋上の戦艦同士の激突は、砲弾が乱れ飛び、魚雷が海面を走り、被弾、爆発、炎上と、緊張とスリルの連続。同時に、戦闘のさなかの艦長の瞬時の指令や乗組員の必死の動きも克明に追っているので、リアリティがあって、生死を懸けた戦いがいかに熾烈なものか、まざまざと見せつけられます。
火を吹き、黒煙を上げながらゆっくりと海に沈んでいく巨艦の姿は、圧巻ではありますが、物悲しくもあって、戦争の虚しさを象徴しているかのようです。
もう一つの見どころのシェパード大佐とリュッチェンス提督との知略戦は、まさに机上の戦いであり、ハイレベルのチェスゲームを観ているような静かな興奮を覚えます。
この映画では、シェパード大佐をヒーローとして描くのではなく、一人の人間として描いていますが、そのアプローチもすばらしいと思います。
任務の重圧や作戦立案の不安に止まらず、ドイツ軍の空爆で妻を失った喪失感や戦地で行方不明になった息子への悲痛な想いなどシェパード大佐の個人的な苦悩も丹念に描くことにより、戦争の悲惨さがより浮き彫りとなって、明らかに作品に深みが増しているような気がします。
そして、シェパード大佐を控えめにさり気なくフォローするデイビス士官。彼女の存在がなかったらさぞ殺伐とした映画になったのでは、と思わせる位の存在感があります。ダナ・ウインターというイギリス女優ですが、キレイな人ですね。ラストの清々しさも彼女あってのものだと思います。
この映画で残念なのは、イギリス軍とドイツ軍の見分けがつきにくいところとドイツ軍将校が英語を使うところでしょうか。敵・味方の判別は軍服で何とか分かるとしても、英語の方はどうも……ちょっとテンションが下がります。