お気楽CINEMA&BOOK天国♪

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🔵映画「天国への階段」/(1946イギリス)感想*神様も降参の“一耳惚れ”の恋*レビュー4.3点

天国への階段 [DVD]

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【一目惚れならぬ“一耳惚れ”の恋】

天国の使者のミスで生き返った英国男が米国女との恋を叶えるため、あの世とこの世を行ったり来たりする話。

何となくエルンスト・ルビッチの「天国は待ってくれる/(1943アメリカ)」を思い出します。あの世とこの世というシチュエーションがよく似てるし、あの世の入口に受付があるトコなんてそっくり。もっとも、受付にいるのが絶世の美女か閻魔大王かの違いはありますが……。

しかし、この映画も、ルビッチ作品に負けず劣らずお洒落です。しかも、イギリスらしく上品で紳士的。最後までニコニコ顔で楽しめる大人のファンタジーだと思います。

【あらすじ】

時代は第二次世界大戦中の1945年。イギリス空軍のパイロットのピーター・デヴィッド・カーター少佐は、ドイツ爆撃の帰還中、機体に被弾し、無線連絡を試みる。

無線を受けたのは、アメリカ人女性オペレーターのジューン。ピーターはジューン相手に人生最後の会話を楽しみ、死んだら幽霊になって会いに行くと約束して炎上する機体から地上へ飛び降りる。

その後、浜辺で意識を取り戻したピーターは、怪我一つしていないことを不思議に思いつつ、浜辺をうろつき、偶然通りがかった女性に声をかける。

女性の名はジューン。二人は無事に会えたことを喜び合い、たちまち恋に落ちる。

やがて、ピーターの前に天国からの死者が現れる。死者は、ピーターが生き返ったのは自分のミスだから、今すぐ天国に連れて帰る、と言う。

ジューンと一緒に過ごしたいピーターは、激しく抗議し、その結果、ピーターの生死は天国の裁判に委ねられることに。

ジューンはピーターの異変を察知し、町一番の名医・フランクに助けを求める。フランクはピーターの言葉を信じ、協力を約束するのだが……。

【感想・レビュー】

この世(地上)はテクニカラー、あの世(天国)はモノクロという映像感覚が斬新ですね。地上の生命力と天国の静謐のコントラストを際立たせる狙いがあるんだろうと思いますが、観ている方は、単純に話が分かりやすくて助かります。

この映画、冒頭のピーター(デヴィッド・ニーヴン)とジューン(キム・ハンター)の無線通話のやりとりが出色の出来です。

死が目前に迫っている中、ピーターのお喋りが、悲愴ではあるけれどウィットに富んでいて、いかにも英国紳士ふう。粋でダンディでカッコいいなぁと思います。真の紳士とは、いつ、いかなる場面でも余裕を失わない人のことをいうんですね。勉強になります(手遅れだけどw)。

一方のジューンは、フランクでフレンドリー。懸命にピーターを励ます姿が健気でグッときます。こちらはいかにもアメリカ女性って感じです。

なるほど、これなら二人が一目惚れならぬ“一耳惚れ”に陥るのも分かる気がします。

この冒頭シーンでグイッと話に引き込まれ、後はアッと驚く波瀾の展開。クライマックスの天国の審判も見どころです。

検察官と弁護人の議論の応酬自体は、当時のイギリスとアメリカの関係を反映してか、単なる意地の張り合いみたいで、それほど面白くはありませんが、あらゆる人種が集合した法廷の様子はなかなか壮観です。ジューンの涙を証拠品として提示するアイデアもイギリス流でお洒落です。

映像的には、“天国への階段”のセットが圧巻。1946年のイギリスでよくこんなセットが作れたもんだと感心します。

それと、この映画、脇役がいいですね。ドジで愛嬌たっぷりの天国の使者コンダクター71(マリウス・ゴーリング)とか、ピーターとジューンの恋を成就させようと奮闘する町医者フランク(ロジャー・リヴシー)とか、みんな善人で、しかも魅力的です(フランクはオチャメながら堂々たる風格があって、これまた紳士の鏡、カッコいいです)。

ちなみに、コンダクター71は、生前はフランス貴族、フランス革命で斬首刑になったという設定です。そんなファンタジーならではの設定も遊び心があって愉快ですね。