🔵映画「アイアン・ジャイアント」/(1999アメリカ)感想*50年前に観たかった⁉胸熱のロボット・アニメ*レビュー4.2点
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【胸熱のロボット・アニメ】
1999年アニー賞の9部門を受賞したワーナー・ブラザースによる長編アニメーション映画。
アニメは久し振り。「トイ・ストーリー3」以来です。たまには童心に帰って、こんな映画もいいもんですね。
少年と巨大ロボットの友情を描いたこの作品、ベタと言えばベタなんですが、シンプル・イズ・ベスト、これぞ王道という安定感があって、子どもたちに愛や勇気の意味を分かりやすく教えてくれる、珍しく健全な映画だと思います。
また、大人たち(特に鉄腕アトムや鉄人28号をこよなく愛した世代)にとっては、懐かしくて温かくて切なくて、涙なしには観られない映画だろうと思います。
【あらすじ】
1957年のメイン州の小さな港町。9歳の少年ホーガースは、森の中で巨大なロボット、“アイアン・ジャイアント”を発見する。
彼は、無邪気な赤ん坊のようなアイアンに言葉を教え、食料の鉄屑を与え、人目に付かぬよう家の倉庫に匿う。
しかし、巨大ロボットを見たという噂が広まって、ついに政府のエージェントが派遣されることに。
ホーガースは、近くに住む変わり者の芸術家ディーンと協力して、必死にアイアンを守ろうとする。
しかし、アイアンの正体は、宇宙の彼方で製造された戦闘用ロボットだったのだ……。
【感想・レビュー】
ストーリーがシンプルなだけにストレートにハートを直撃する映画です。もう50年若ければ、きっとボロ泣きしたに違いありません。
最初は、ホーガースの顔がちっとも可愛くないし、ディーンも人相が悪いし、何て古臭いアニメだろうと思って観ていたのですが、観ているうちに合点がいきました。なるほど、この画は1957年の時代感を演出するための工夫だったんですね。
そうと分かると、このレトロ感が何となく味わい深くなって、最後は、この画じゃないとこの映画の良さは引き出せないんじゃあ、なんて思えてくるから不思議です。実際、ホーガースのママなんて、50年代のアメリカ女性の雰囲気がホントによく出ています(ママの顔は結構好みです)。
ママの画以上に感心したのは、アイアンの表情。シンプルな線で描かれた簡単(そう)な画なのにびっくりするほど表情豊かで、ホーガースに叱られてシュンとするところなんて、可愛らしくてたまりません。
また、自分が恐ろしい破壊力を秘めた戦闘兵器だと知ってショックを受けるところとか、憧れのヒーロー・スーパーマンに負けじとミサイルに立ち向かっていくところなんて、いじらしいやら悲しいやらで、ついホロッときてしまいます。
おそらく最新のCG画像だと、こんな素朴な味わいは出せなかっただろうと思います。時代を50年代に設定して、シンプルなストーリーと古臭い画にこだわった製作スタッフの慧眼に敬意を表します。
加えて、子供向け?アニメなのに、米ソ冷戦下のアメリカの社会や家庭を忠実に再現して作品に社会性を持たせている点も高く評価したいと思います。
……その点では、政府のエージェントは、当時のアメリカ政府や一部の保守層を象徴する存在として描かれているように思えます。
冷戦あり、スプートニク・ショックありで、ソ連を目の敵にする彼の気持ちも分からなくはないですが、思い込みが激しすぎて、アイアンを理解しようという姿勢が全く見られません。たぶん監督は、彼の醜態を通して、異質なものに対する猜疑心とか憎悪がいかに愚かで危ういものかを伝えたかったんだろうと思います。
そういった意味で、この映画は、排除の論理が益々激しくなった現代でこそ再評価されるべき映画と言えるのかもしれません。