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🔵映画「汚名」/(1946アメリカ)感想*バーグマンの圧倒的な美が光る“神聖バーグマン帝国”の映画*レビュー4.1点

汚名(Notorious) [DVD]劇場版(4:3)【超高画質名作映画シリーズ17】 デジタルリマスター版

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【“神聖バーグマン帝国”の映画】

やっぱりバーグマンは正真正銘のスターですね。登場しただけでスクリーンがパッと華やいで、観客の目を釘付けにします。美のオーラが全開で、美女好みのヒチコックのおメガネに叶うだけのことはありますね。

この作品、ヒチコックにしてはめずらしくロマンス色の強いスリラーですが、もちろんハラハラドキドキは健在です。

何となく先は読めるのに、分かっていてもやっぱり恐い(分かるだけに恐い?)。そこがヒチコックの凄いところだと思います。

【あらすじ】

スパイ容疑で投獄された父親のせいで世間から売国娘と後ろ指を差されるアリシアは、その汚名を濯ぐため、FBI捜査官デブリンの依頼を受け、リオ・デ・ジャネイロに飛ぶ。

リオにはFBIがマークする、ナチの残党と思しき父の友人セバスチャンがいた。

デブリンの指示に従い、アリシアは度々セバスチャンと接触し、セバスチャン一味の動きを探る。

やがて、セバスチャンから求婚されたアリシアは、思い悩んだ末、デブリンへの想いを断ち切ってセバスチャンと結婚する。

その後、屋敷の地下に秘密の酒蔵があることを突き止めたアリシアは、意を決して酒蔵の鍵を盗み出す。

そして、パーティの夜、デブリンとともに酒蔵に忍び込むのだが……。

【感想・レビュー】

サスペンス・スリラーとしても、恋愛映画としても楽しめる、ヒチコックらしいサービス精神に溢れた秀作です。

ヒチコックはやっぱり小道具の使い方がうまいですね。この作品でも、鍵、ワインボトル、コーヒーカップなどの存在が生きています。

アリシアがセバスチャンに気付かれないように掌に鍵を隠すシーンとか、パーティの席でワインボトルが1本また1本と減っていくシーンとか、観ている方は、いつバレるか、いつバレるかとハラハラし放し。心臓に悪いです。こういう演出がいかにもヒチコック流ですね。冴えてます。

加えて、この作品を名画たらしめているのは、バーグマンの存在です。恋を意識するにつれ、はすっぱ娘から純な娘へと変わってゆくあたりの演技は見事の一言。デブリンとの恋の駆け引きもお茶目でお洒落。仕事一筋のクールなデブリンがメロメロになるのも納得です(はすっぱ娘を演じてもどことなく気品と知性が感じられるのがバーグマンの魅力ですね)。

往年の銀幕スター・グレタ・ガルボはその美貌と神秘性ゆえ「神聖ガルボ帝国」と謳われましたが、同様にバーグマンも「神聖バーグマン帝国」と言って差し支えないと思います。

美は全ての理性を凌駕する説得力を持つ……これがこの映画のバーグマンを見た私の所感ですw

デブリン役のゲーリー・グラントも文句なしの二枚目なのですが、今回は、美女を生贄に差し出す情けない男の役。どうも好きになれません。

むしろ注目すべきはセバスチャン役のクロード・レインズでしょう。煮え切らないデブリンよりは、一途にアリシアを愛し、愛ゆえに悪人に徹しきれず、破滅に向かうセバスチャンの方がよほど人間味があって魅力を感じます。ラストシーンで見せるセバスチャンのギリギリの苦悩は、男なら誰だって共感できるだろうと思います。この作品の影の主役は、たぶんクロード・レインズですね。地味だけど渋い役者です。