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🔵映画「トレーニング・デイ」/(2001アメリカ)感想*毒をもって毒を制す、を地で行く映画*レビュー3.8点

トレーニング デイ [Blu-ray]

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【毒をもって毒を制す、を地で行く映画】

「孤狼の血(柚木裕子)」の大上刑事のモデルとなったのがこの作品のアロンゾ刑事、と何かで読んで、一回観ておくかあって感じで視聴。

確かにアロンゾと大上は共通点が多く、「孤狼の血」というタイトルもアロンゾを連想させます。アロンゾは新米刑事のジェイクに言います……「必要なら規則も破る。それが狼だ」と。よく似てますね。

しかし、大きな違いは、アロンゾの方はヒールに徹しているところ。その存在感は圧倒的で、デンゼル・ワシントンのアカデミー賞主演男優賞受賞も納得です。

まさに“毒を持って毒を制す”を地で行く映画。中途半端に善人ぶるより、ヒールに徹しているところが、アメリカらしくていいかなと思います。

しかし、救いがなさすぎるところはどうも……。

【あらすじ】

ロス市警の麻薬捜査課に配属になった新米刑事・ジェイクは、カリスマ的なベテラン刑事・アロンゾとコンビを組むことになる。

配属初日、アロンゾはジェイクにトレーニング・デイ(訓練日)と称して、過酷な現場を連れ回す。

しかし、アロンゾの行動は、暴行、脅迫、恐喝、証拠捏造と、警官にあるまじき違法行為だらけだった。

正義感の強いジェイクはアロンゾに抵抗するが、アゾンゾは聞く耳を持たないばかりか、ジェイクを窮地に陥れる。

そして、ついにジェイクの怒りが爆発する……。

【感想・レビュー】

何日間かの出来事を追ったドラマかと思ったら、ジェイクのトレーニング・デイのたった一日の出来事だったんですね。次から次へといろんな出来事が起こるので、つい勘違いしてしまいました。

しかし、アロンゾのエゲツなさはハンパないです。さすが「俺が狼から羊を守る。狼を倒せるのは狼だけだ」と豪語するだけのことはあります。ブラックなオーラが全開で、ジェイクだけでなく、観ている方も度肝を抜かれます。

アロンゾの行動は法の埒外にあり、その行動規範は(正義ではなく)最終的には自己の利益。アロンゾと敵の関係は、単純に、狼vs狼、悪vs悪であって、どちらにも道徳的優位性がない点が特徴的です。そこがフツーの刑事映画と違うところでしょうか。  

かつて正義感に燃えていたアロンゾがそんな心境に堕ちるまでに一体どれだけの地獄を見てきたのか、そこにアメリカ社会の深い闇を想像して暗澹たる気分になりますが、一方で、それが彼の凄みとなって観る者を圧倒します。

デンゼル・ワシントンは、やっぱりうまい役者ですね。ヘラヘラ笑うときの顔は何とも不快だし、躊躇なく引き金を引くときの顔は堪らなく不気味です。アロンゾが抱える底知れない闇をそういったちょっとした表情や仕草で表現できるところが凄いと思います。

イーサン・ホークもすばらしいですね。訓練初日からこんなひどい目に遭ったら、誰だってびっくりするし、腹も立ちます。若い熱血刑事の、戸惑い、悩み、怯えから怒りへと続く感情の流れを自然に演じているところに彼の非凡さを感じます。

二人の大スターの共演で見応えのある映画。内容的にも、これもアリとは思いますが、好きか嫌いかと聞かれると……なんだかなあという感じですかね。映画に救いを求める自分としては、救いがない映画はやっぱり趣味に合わないのかなと思います。