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🔵映画「アメリカ交響楽」/(1945アメリカ)感想*天才はなぜ生き急ぐ?ガーシュインの激動の生涯を描いた伝記映画*レビュー4.1点

アメリカ交響楽 [DVD]

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【天才はなぜ生き急ぐ?】

アメリカの偉大な音楽家ジョージ・ガーシュインの激動の生涯を描いた伝記映画。

ガーシュインの没後(1937年)間もなく制作された映画ということで、多くのピアニストや音楽関係者が本人役で出演しています。

ちなみに、ガーシュイン役のロバート・アルダもプロのピアニスト。したがって、吹替えなしでガーシュインの音楽世界を堪能できます。その意味で、とても贅沢な映画だと思います。

……この映画の公開は1945年。日本が焼け野原になっているときに、アメリカ人はこんな映画を観ていたんですね。

時代を顧みると、何ともいえぬ複雑な思いに駆られ、溜息が出そうになります……。

【あらすじ】

ニューヨークの楽譜出版社でピアノ弾きとして働いていたジョージ・ガーシュインは、客のジュリーに自分の作った曲を売り込んでクビになってしまう。

しかし、まもなく、彼が作った「スワニー」がブロードウェイで評判となり、ジュリーも彼の曲を歌って人気を博すようになる。そして、二人の仲も親密になっていく。

瞬く間に成功を手にしたガーシュインだったが、師の教えもあって、クラシックへの情熱を捨て切れないまま、多忙な日々を送る。

そんなガーシュインの元にジャズ交響楽の作曲の依頼が舞い込む。彼が3週間を費やして創り上げたのは、アメリカ音楽史に燦然と輝く不朽の傑作「ラプソディ・イン・ブルー」だった。

この成功で益々音楽への情熱を強くしたガーシュインは、協奏曲を学ぶためパリへと留学する。そして、1年前離婚したというギルバート婦人と出会う……。

【感想・レビュー】

全編、耳に馴染みのあるポピュラーソングやクラシック音楽に彩られたミュージカル仕立ての伝記映画。

こうやってガーシュインの音楽をじっくり聴いてみると、確かに(ヨーロッパにはない)アメリカ独自の音楽という感じがしますね。”ジャズとクラシックを融合させた近代の偉大な作曲家”という世評も素直に頷けます。

圧巻はやはり「ラプソディ・イン・ブルー」でしょうか。以前CDで聴いたときにはそれほどとは思わなかったのですが、この映画のクライマックスの演奏シーンには痺れました。ピアノ演奏がガーシュインと実際に親交のあったオスカー・レヴァント本人だったせいもあるのかもしれませんが。

この映画がどの程度史実に忠実なのかはよく分かりませんが、生き急いだ人生だったのは間違いないようです。自らの生きる証をただ音楽のみに求め、ひたすら演奏、創作活動に邁進した38年間。そのひたむきな情熱には圧倒されますが、一方で、音楽から片時も離れられない天才音楽家の宿命が痛ましくもあり、彼の孤独な生涯を物悲しくも感じます。

彼の半生を一瞬彩ったジュリーとギルバート婦人が彼の元を去った気持ちも何となく分かる気がします。

この映画は、ガーシュインの天才としての栄光と、人間としての孤独を均等に描いているところがすばらしいですね。ガーシュインへのリスペクトが感じられる、真面目で良心的な作品だと思います。

それにしても……ギルバート婦人役のアレクシス・スミスは超絶美女です。たまげました。ジュリー役のジョアン・レスリーもとても愛らしいのですが、美の次元が違います。二人を比べると、山手の貴婦人と下町娘といった感じでしょうか(快活な下町娘も決して嫌いではありませんが)。

昔のハリウッド映画は、たまに端役、脇役でたまげるほどの美女が登場します。それを発見するのも古い映画を観る愉しみの一つではあります。……映画の見方としては、邪道かもしれませんが。