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🔴本「うずら大名」/畠中恵(集英社文庫)感想*「ご吉兆〜」と鳴く鶉キャラ登場*レビュー3.7点

うずら大名 (集英社文庫)

うずら大名 (集英社文庫)

【「ご吉兆〜」と鳴く鶉が主役】

うーん。しっかりした造りの安定した作品だとは思いますが、何となく物足りない印象が残ります。出来としては、可もなく不可もなしといったところでしょうか(失礼)。

鶉(うずら)の佐久夜は愛嬌たっぷりで可愛らしいのですが、後りのキャラクターが……あんまり馴染めません。

とぼけたユーモアと物悲しいペーソスが入り混じった作品なので、人物造形は結構難しいんだろうと思いますが、やっぱりこういうエンタメ小説ってキャラの愛嬌って大事ですよね。登場人物にスッと感情移入できないのは、たぶんそのせいだろうと思います。

【あらすじ】

いくつになっても臆病で泣き虫の吉之助。東豊島村の豪農で名主の彼は、ある日、辻斬りに襲われる。

泣きながら逃げ惑う吉之助を窮地から救い出したのは、自称“大名”を名乗る有月と彼が飼っている一羽の鶉。二人はたまたまかつて同じ道場に通っていた幼馴染みだった。

有月から藩に金を貸す”大名貸し”になってほしいと頼まれた吉之助は、頼みを断りきれず、以来、大名と百姓(一応豪農ではありますが)という身分違いの付き合いが始まる。

そんな折、あちこちで大名貸しの豪農が急死する事件が相次ぐ。

吉之助、鶉の佐久夜らと共に内偵を始めた有月は、やがて、それらの事件の背後に幕藩体制を揺るがす陰謀が隠されていることを知る……。

【感想・レビュー】

「ご吉兆〜」と鳴く鶉の佐久夜のアイデアがナイスですね。この物語、“封建社会における次男坊、三男坊の悲哀”が一つのテーマになっているので、少し重たいところもあるのですが、佐久夜の活躍に癒やされます。

気性が荒く、気に食わないとすぐ突付く、というやんちゃなキャラクターもいいですね。人の手に余る小さな生き物って、何でこんなに可愛いんでしょうか。

一方、人間の方はというと、吉之助といい、有月といい、なんかイマイチですね。

大人の泣き虫キャラって割と珍しい気がしますが、ちょっと奇を衒いすぎかなと思います。話が盛り上がる度に吉之助に泣かれたんでは、読んでる方も興が醒めてしまいます。

有月も善人には違いないのでしょうが、妙に厚かましく気分屋のところが好きになれません(やっぱりイケメンは敵だ!)。

できれば、道場の門下生たちの憧れの君だった清心院様の出番をもうちょっと増やしてほしかったなと思います。そしたら、この物語にもう少し艶や華が出たような気がするのですが。

幕藩体制を揺るがす陰謀やその動機が結構シリアスで、単なる勧善懲悪ものを超えたリアリティや説得力があるだけに、物語を牽引する主役らのキャラクターが弱い点が惜しいところかなと思います。