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🔵映画「ピエロの赤い鼻」/(2003フランス)感想*作り手の良心や人間愛がいっぱい詰まった珠玉の映画*レビュー4.5点

ピエロの赤い鼻 [DVD]

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【作り手の良心が詰まった、隠れた?名作】

『クリクリのいた夏』のジャン・ベッケル監督作品。

こういうのを“珠玉の映画”っていうんでしょうね。ちょっと哀しいストーリーだけど、人間愛に溢れていて、心にポッと灯りが点ったような温かみを感じる作品です。

視聴後は、しばらくしみじみとした余韻に浸って……。ああ、映画好きでよかった、そう思える至福のひとときです。 

【あらすじ】

舞台はフランスの田舎町。日曜日になると、ジャック一家は、街に出かけるのが習慣になっている。ジャックが公民館でピエロ芸を披露するためだ。

でも、ジャックの息子・リシュアンは、ピエロの格好をして下手な芸を披露している父を見るのが嫌で嫌でたまらない。

そして、今日も舞台を見てウンザリしているリシュアン。ジャックの親友のアンドレは、そんなリシュアンを見て、彼を外に連れ出し、ジャックがなぜピエロ芸を披露しているのかリシュアンに語り始める。

……それは、フランスがドイツ占領下にあった時代のジャックとその仲間たちのこと、そして彼らに忘れ得ぬ記憶を残した哀しいピエロの物語だった……。

【感想・レビュー】

ピエロって、コミカルだけどどこか切なさとか哀愁を感じますよね。この映画の印象は、まさにそのピエロのイメージとぴったり。哀しくて切ないけれど、温かくて優しい物語です。

描かれているのは、戦時下を生きた平凡な人びとの忘れ得ぬ記憶。

ジャックとアンドレの友情やジャックとルイーズ(ジャックの妻)の恋は、ちょっとコミカルで微笑ましくて、フィリクス(劇中登場する鉄道作業員)の自己犠牲やピエロ(ドイツの兵隊)の博愛は、温かくも切なくて……どのエピソードもなんか泣けてきます。

そして、トドメはリシュアンの涙。父がピエロを演じる理由を知ったリシュアンは、舞台の父に向かって精一杯の拍手を送ります。そのとたん、観ている方も涙腺崩壊。ああ、なんていい映画なんでしょう。『クリクリのいた夏』といい、この映画といい、私は、この監督を無条件で好きになりました。

この映画のテーマは、人間愛。登場するのは、みんな平凡な人びと。彼らは無力だけど、愛の力を武器にして理不尽な敵(戦争)と対峙します。人を殺す戦争と人を生かす人間愛、あるいは、戦争と笑い。そのコントラストが見事です(優しさとは何か?強さとは何か?人間らしさとは何か?……深く考えさせられます)。

少しこじんまりとした印象はありますが、手作り感があって人肌の温もりが感じられる、いかにもフランスらしい映画。“良質の映画を作りたい”という制作スタッフの心意気や映画愛を感じます。

“百聞は一見に如かず”。ぜひ多くの人に観ていただきたい作品です。