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🔵映画「モスクワは涙を信じない」/(1979ソ連)感想*今をひたむきに生きる女性にオススメ!素晴らしい女性讃歌*レビュー4.4点

モスクワは涙を信じない HDマスターDVD

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【素晴らしい女性讃歌】

別にメドちゃん&ザギちゃんのファンだから、という訳でもないのですが、今回はソ連の映画です。

この作品は、1980年度アカデミー賞外国語映画賞受賞作。アカデミー賞受賞作って、何故かパッとしない作品が多いのですが(失礼!)、この外国語映画賞受賞作は、結構掘り出し物が多い気がします。

……で、今回は期待どおりの“BINGO!”です。これは秀作。素晴らしい女性讃歌です。こういう映画に出会うと、つい紹介にも力が入ってしまいます(文才が追いつかないのが残念ですが……)。

今をひたむきに生きる女性の皆さんにオススメ。たぶん共感度Maxだと思います。

【あらすじ】

第一部の舞台は、1958年のモスクワ。田舎から出て来て都会の工場で働くトーニャ、リューダ、カーシャの3人の女の子。地味で堅実なトーニャは工場の同僚と、活発でお洒落なリューダは有名ホッケー選手と、それぞれ結婚する。一方、向上心に富み大学進学を目指すカーシャは、子どもを身籠ったことが原因でテレビカメラマンと破局し、シングルマザーとなる……。

そして、第二部の舞台は、20年後のモスクワ。変わり映えのしないトーニャや離婚したリューダに比べ、カーシャは努力して工場長にまで登りつめ、大学生になった娘と裕福な生活を送っている。しかし、どうしても心の寂しさが埋められないカーシャ。そんな彼女の前にゴーシャという男が現れる。初めはゴーシャの不躾な態度に反撥を覚えたカーシャだったが、過去の男たちにはない彼の誠実さに惹かれ、二人は結婚を約束する。しかし、長く音信不通だったかつての恋人(娘の父親)が突然娘に会いたいと押しかけて来て、ゴーシャとの関係に亀裂が生じてしまう……。 

【感想・レビュー】

若気の至りでシングルマザーとなったヒロイン・カーシャが、逆境を乗り越えながら人として成長し、真実の愛に巡り合うまでをユーモラスに描いたハートウォーミング・ドラマ。

「モスクワは涙を信じない」という言葉は、「泣いたところで誰も助けてくれない」という意味のロシアの格言だそうです。“だからポジティブに”というその格言のニュアンスは、前向きに生きる女性を描いたこの映画にピッタリのタイトルだと思います。

しかし、人の営みって、古今東西、似たようなものなんですね。嬉しくて笑ったり悲しくて泣いたり、裏切ったり裏切られたり、努力が報われたり報われなかったり、運に恵まれたり見放されたり……いいこともあれば悪いこともある。それを全部人生の宝物として受け容れて自分らしく生きようとする女性たちの姿がとても素敵です。やっぱりどこの国でも、女性はしなやかで逞しいですね。そして、驚くべきは、“女子会”の結束力。これも古今東西、変わらないものなのかも(しかし、この結束力は謎ですね。動物学的見地や社会学的見地から考察した文献でもあれば、読んでみたいものです)。

一方、面白いのは、ソ連の男たちの考え方。比較的話の分かるゴーシャでさえ、“家では男が一番偉くあるべき”、“給料は夫が妻より高くあるべき”と豪語します(カーシャもあえて反論しません)。呆れるほど封建的ですが、今はどうなんでしょうか。男って、チンケなプライドとか見栄にこだわるしょうもない生き物ですから、あんまり変わってないかもですね。だから、なんでこんなに賢いカーシャがゴーシャに惚れ込んだのか、いまいちピンと来ません。……もっとも、登場する男たちがほとんどパッとしない奴ばかり(ゴーシャはまだマシな方)。“こんなはずでは”と過去を後悔しながら、昼間からウォッカをあおっています。ただ、そんな自分を嗤うだけの余裕があるところがしぶといというか、楽観的というか、いかにもソ連らしいなあと妙に感心します。

この映画の制作が1979年。ソ連崩壊の10年ほど前ですから、経済的にはかなり行き詰まっていた時代だったんでしょうね。当時の閉塞感がこの映画にも影響しているように思えます(ひょっとして風刺映画なんでしょうか?)。

……といった、どうでもいい考察は置いといて、この映画、女性たちのほろ苦い後悔と楽観的な決意を情感豊かに描いた、なかなかの名作だと思います。機会があったらぜひ観ていたたきたい一本です。