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🔵映画「セブン」/(1995アメリカ)感想*救いがなくて嫌いだけど……認めざるを得ない映画*レビュー4.1点

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【救いがなくて嫌いだけど……】

『ファイト・クラブ』のデーヴィッド・フィンチャー監督作品。

あまり気乗りはしなかったのですが、一度観ておくべき作品かと思って。……で、案の定、恐ろしく陰気で不気味なサイコスリラー。救いのなさも桁違いです。

しかし、映像、演出、ストーリー展開など、映画としての完成度は、確かに一級品。好きなタイプの映画ではありませんが、この作品が未だに根強い人気をキープしているのも分かる気がします。

【あらすじ】 

雨のそぼ降る陰気な街で起きた凄惨な殺人事件。現場に残されていたのは、胃袋に大量の食物を詰め込まれた肥満の男の死体と、“大食”と書かれたメモ。そして、ほどなく第二の殺人事件が起きる。被害者は悪徳弁護士、現場には血塗れの死体と、血糊で書かれた“強欲”という文字が残されていた。

退職を一週間後に控えた老刑事サマセットと血気盛んな若い刑事ミルズは、「七つの大罪」をモチーフにした犯行と断定し、犯人の行方を追う。しかし、怜悧で狡猾な犯人は、警察の必死の捜査を嘲笑うかのように、立て続けに“怠惰”、“肉欲”、“高慢”をモチーフにした殺人を完遂する。

そして、サマセットとミルズがようやく犯人を割り出した頃、犯人は二人の元に出頭し、あっけなく逮捕される。

犯人の自首の狙いは?残る“嫉妬”と“憤怒”の殺人は?……。

【感想・レビュー】

汚くて暴力的で倫理が欠如した絶望的な街で立て続けに起こる猟奇的殺人。しかも雨ばかり降って……陰鬱です。しかし、何故かスクリーンから目が離せません(怖いもの見たさ?)。斬新な色調の映像美に加え、“感情と理性”、“善と悪”の対立を基軸としたミステリアスでスリリングな展開……これがデーヴィド・フィンチャーの世界観でしょうか。とにかく濃密な2時間です。

視聴後、しばらく神経が掻き乱されて、直ぐには犯人の意図が飲み込めなかったのですが、落ち着いて考えてみると、凡そは納得(一体勝者は誰なのかが未だに疑問。キリスト教の理解不足?)。と同時に、改めて犯人の得体の知れない狂気や人間のボーダーを超えたサイコパスぶりに震撼します(いかにも現実にいそうで怖い!)。

この作品には、ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、ケビン・スペイシー、グヴィネス・パルトローら、当代一流の俳優が集結(一体、ギャラはいくらになるんでしょう?)。ブラッド・ピットの体当たりの演技、モーガン・フリーマンのよく響く渋い声、ケビン・スペイシーの能面のような表情、そして唯一安らげるグヴィネス・パルトローの笑顔……どれも印象的で、どれも見ものです。

この作品と『ファイト・クラブ』に共通しているのは、狂気とも言うべきブラックな情熱。ただ、『ファイト・クラブ』の方は、熱が外部に発散されている感じがして、まだ救われるのですが、この作品には(宗教的、哲学的趣きは窺えるとしても)あまりに救いがなくて、寒気しか感じません。

……ということで、心の底にへばりつくような恐怖体験がしたい人には、『羊たちの沈黙』か、この『セブン』をオススメします。