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🔴本「ルビンの壺が割れた」/宿野かほる(新潮社)感想*1通ごとにガラリと変わる世界、その行き着く先は?……*レビュー3.9点

ルビンの壺が割れた

ルビンの壺が割れた

【多くは書けないけれど……これは衝撃!】

紀む伊國屋書店の話題作コーナーの平積み本、しかも、ポップが扇情的だったので、興味津々で即購入。薄くて読みやすい割には、スリリングで衝撃的。確かにこれは一気読みの小説。

しかし、感想は、良くも悪くも、“うげぇ〜‼”って感じです。物語の冒頭とラストの印象がこれほどかけ離れている小説もめずらしいと思います。

万人受けする小説とは思いませんが、イヤミス好きの人や退屈な日常に刺激を求めている人には結構オススメかも。

【あらすじ】

30年前、結婚式の当日に突然姿を消した一馬のフィアンセ・未帆子。SNS上で偶然その名前を目にした一馬は、懐かしさの余り、未帆子にメールを送る。

やがて、未帆子から返信が来て、二人はSNS上で過去の想い出を語り合う仲になる。しかし、“未帆子がなぜ失踪したのか”という核心に近づくにつれ、互いに隠していた過去の秘密が少しずつ明らかになって、事態は思いもかけない様相に……。

【感想・レビュー】

“30年前、結婚を約束を交わした元・恋人同士のSNS上のやりとり”というアイデアの勝利ですかね。そのリアルな設定が、他人の秘密を覗いてみたいという野次馬根性をうまく煽っている気がします。また、メールの度に過去の秘密が明らかになって、謎が膨らんでいくという趣向もなかなか斬新だと思います。

ただ、読んでる方としては、その秘密が想像以上にエグいので、気分的には、どんどんぬかるみにハマっていく感覚に陥ります。最初はラブロマンスの趣なのですが、徐々に芸能人のゴシップネタを読んでる気分になり、やがて不可解なミステリーへと様相が変わって、ラストは完璧な“うげぇ〜‼”のホラー。後味の悪さはかなりのものですが、妙にクセになるタイプの小説かと思います。

たぶん好き嫌いは分かれると思いますが、ストーリーが面白いので、(この手の小説が)苦手な人でもヒマつぶしにはなるでしょうし、好みの人だったらどハマリするんじゃないかと思います。ちなみに私は、まあ、たまにはこんな読み物もいいかなって感じです。

……しかし、タイトルの“ルビンの壺”は、良いセンスですね。(表紙カバーでは)黒地を見ると人の横顔、黄地を見ると壺。でも、決して両方を同時に認識できない不思議な図……意味深で、言われてみると、なるほどドンピャのタイトルだと思います。