お気楽CINEMA&BOOK天国♪

お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔵映画「男たちの挽歌」/(1986香港)感想*アジア的“情念”に彩られた香港ノワール*レビュー4.1点

 男たちの挽歌 <日本語吹替収録版> [Blu-ray]

男たちの挽歌 <日本語吹替収録版> [Blu-ray]

【男の友情と確執をドラマチックに描く】

ジョン・ウー監督とチョウ・ユンファの出世作。同じコンビによる『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』も熱くてヒリヒリしますが、こちらもなかなかの出来。ドラマチックな男の友情と確執に痺れます。

【あらすじ】

偽札作りで羽振りを利かせていた香港マフィアの幹部のホーとマーク。ホーは警察官になった弟・キットのために足を洗う決心をするが、最後の仕事に失敗し、刑務所送りに。その間、マークも幹部の地位を弟分のシンに奪われる。一方、兄・ホーの本当の姿を知ったキットは激しくホーを憎み、偽札製造組織を牛耳るシンの追跡に執念を燃やす。

出所後、カタギの道を選んだホーだったが、シン一味によってマークとキットの身に危険が及んだことから、ついにシンとの対決を決意する……。

【感想・レビュー】

欧米のフィルム・ノワールや日本の任侠映画とは似て非なる“香港ノワール”の草分け的作品。欧米のハード・ボイルド感とアジア的情念が程良くブレンドされた香港オリジナルの名作だと思います。

臨場感溢れる壮絶な銃撃戦、長回しやスローモーションを駆使した映像美、熱き男たちのプライドと友情……これがジョン・ウー監督のアクション美学。30年以上前の映画なので、画質や音楽などに古さは感じますが、それでも見応えは十分です。

最愛の弟を守りたいホー、踏みにじられたプライドを取り戻したいマーク、兄を許せない自分を断ち切りたいキット……戦いの理由は様々ですが、“恥じて生きるより熱く死ね!”と言わんばかりの彼らの生き様につい煽られてしまいます。これは男のための映画。その情念に満ちた世界観に痺れます。

映像的には、雨あられのように銃弾が飛び交うラストの銃撃戦が凄いです。凄すぎて美しささえ感じます(この美的バイオレンス感は、なんとなくサム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ』や『ゲッタウェイ』を彷彿とさせます)。

この映画では、マークに扮するチョウ・ユンファの評価が高いようですが(確かにスーツにロングコートの立ち姿はカッコいい)、私のイチオシはホーに扮するティ・ロン。一見、そこいら辺にいるフツーのオッサンという印象ですが、人間味を感じる渋い演技が魅力です。チョウ・ユンファの大袈裟な演技がそれほど嫌味に映らないのも、ティ・ロンの抑えた演技があってこそ。地味ですが、男の哀愁を見事に体現した演技だと思います(キットに扮するレスリー・チャンも悪くはないと思いますが、二人に比べると、ちょっと小粒な印象が……)。

やっぱりジョン・ウー監督の映画は理屈抜きに面白いですね。近いうちに『男たちの挽歌Ⅱ』も観てみたいと思います。

(追記:その後パートⅡを観ましたのでそちらのレビューはコチラから)