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🔴本「屍人荘の殺人」/今村昌弘(東京創元社)*2018本屋大賞ノミネート作品その4*感想&レビュー4.3点

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

【噂に違わぬ面白さ!前代未聞のミステリー】

なんちゅう奇抜な設定でしょう。ここまでブッ飛んだ小説は久し振り。とにかく、キャラよし、アイデア(トリック)よし、プロットよしで、とことん楽しめるミステリーです。

この作家、これがデビュー作とか。デビュー作で鮎川哲也賞など数々のタイトルを総ナメにするなんて、なんだか将棋の藤井五段みたいな勢いですね。

【あらすじ】

神紅大学のミステリー愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、天才的推理力の持ち主と噂される同じ大学の探偵少女剣崎比留子の誘いに乗り、避暑地の瀟洒な別荘「紫湛荘」で開かれる神紅大学映画研究会主催の曰くつきの夏合宿に参加する。「紫湛荘」に集まったのは、13人の男女。合宿一日目の夜、恒例の肝試しに出かけた彼らは、その途中、想定外の恐るべき事態に遭遇し、「紫湛荘」での立て籠もりを余儀なくされる。周囲を完全に包囲されクローズドサークルと化した「紫湛荘」での恐怖の一夜が明け……彼らが目にしたものは密室の部屋に横たわる仲間の一人の凄惨な死体だった。そして、それは連続殺人の序章に過ぎなかった。葉村らは、生き残りをかけて、事件の謎に挑むのだが……。 

【感想・レビュー】

大学生の男女、夏合宿、洒落た別荘とくれば、これは定番の青春ミステリーか?と思いきや……凡人の予想をあっさり裏切ってくれる驚愕のエンタメ・ミステリー。

何を言ってもネタバレになりそうなので、詳しくは語れませんが、奇抜すぎる設定と精巧極まりないトリックという相容れそうもない二つの要素が不思議なほど違和感なく融合した見事な作品だと思います。

文体も軽妙洒脱でユーモラス、葉村くんのダメ出しはホントに笑ってしまいます。比留子さんのキャラもいいですね。ホコホコします。普段はおっとりした天然系のお嬢様、しかしひと度事件が起きれば怜悧な天才探偵へと早変わりという、ベタといえばベタなキャラなのですが、「葉村くん、○○してくれたらちゅーしてあげる」とか「○○してくれたら膝枕してあげる」とか、いちいちセリフがキュートなので、全て許せます(ただし、比留子さんが二重の密室の謎を解く場面は、緊張感Max、その論理の美しさは鳥肌ものです)。かなりグロテスクな描写が多い作品ですが、この二人のちょっとワンテンポずれた、ほんわかしたキャラがそのグロさをうまく緩和しているような気がします。たぶんこの新人作家はその辺りも計算づくなんでしょうね(登場人物が多すぎて四苦八苦してたら、途中で比留子さんが分かりやすく整理してくれました。この作家、サービス精神も旺盛です)。

個人的には、一、ニ点ストンとこないところはありますが、面白さという点では文句なしの出来だと思います。

……しかし、班目機関やテロの首謀者浜坂准教授に関するくだりがなんとなく思わせぶりなところをみると、ひょっとして“美少女探偵剣崎比留子シリーズ”とか銘打って第二弾が用意されているのかもしれませんね。比留子さんの俄ファンとしては、そこは是非期待したいところです。