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🔵映画「ミフネ」感想*ままならぬ人生なら、なりゆきに任せて*(1999デンマーク)レビュー4.4点

ミフネ [DVD]

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【ままならぬ人生なら、なりゆきに任せて】

最近ハリウッド映画を3本観ました。どれもそこそこ楽しめたのですが、長々とコメントするような類の作品でもないので、寸評に止めます。

🔵キングコング 髑髏島の巨神/(2017アメリカ)

映画というよりアトラクション(見世物)。登場人物のキャラが薄く、何より今回のコングにはいつもの愛嬌がない。それでもコングと大トカゲの死闘にはそれなりにエキサイト。

🔵ジェイソン・ボーン/(2016アメリカ)

マット・デイモンとジュリア・スタイルズ、二人とも老けたなあ。でも、トミー・リー・ジョーンズが老けて見えないのはなぜw テンポが良くて面白いが、コマ割りが速すぎて、老人の眼では付いていけないのが残念。

🔵スター・トレック BEYOND/(2016アメリカ)

安定のシリーズ。最後はお約束の大団円だから安心して観ていられる。そういうところは嫌いじゃないが、その分、内容は2日たったら忘れていそう。可もなく不可もなし、平均点の作品。

 

……ということで、本題の『ミフネ』に移ります。

これはデンマークの映画。デンマーク映画と言えば、『バベットの晩餐会』と『幸せになるためのイタリア語講座』がマイベストですが、この『ミフネ』もそれらに匹敵する逸品だと思います。

ちなみに『ミフネ』ってかなりヘンなタイトルですが、これは三船敏郎へのオマージュです。主人公が菊千代の仕草を真似て棒を振り回すシーンなど、『七人の侍』ファンなら誰でもニンマリすること請け合いです。

【あらすじ】

都会(コペンハーゲン)で美しい妻を娶り、成功した弟と、田舎でほそぼそと父親と暮らす知的障がい者の兄。新婚早々、弟は父親の訃報を受け、妻に詳細を告げずに田舎に帰ります。彼は、裕福な家庭で育った妻に自分の不遇な過去をどうしても知られたくなかったのです。

彼は昔と変わらぬ兄と再会します。父の葬儀を済まして早く妻の待つコペンハーゲンに戻らなければならないのですが、兄を一人にする訳にはいきません。そこで弟は、メイドを募集します。応募してきたのは、美貌の元娼婦。彼は彼女の素性を知らぬまま採用を決め、家に招き入れます。しかし、そこに彼の妻が現れて、状況を誤解した彼女から離婚を言い渡されます。更に、メイドの弟が学校を放校となって、彼の家に転がり込んできます。

そこから悩める4人の奇妙な暮らしが始まります……。

【感想・レビュー】

のっけから男女の過激なシーンで、「選択を誤ったか?」と一瞬うろたえてしまいますが、心配御無用。以降は落ち着きのある、繊細で奥深い人間ドラマが展開され、最後まで興味深く鑑賞できます。ドグマ95というデンマーク映画特有の撮影方法(手持ちカメラ、セットなし、音響なしetc )で撮っているためか、画質は幾分粗く感じますが、その分自然体な感じがしてリアリティも増している気がします。同じデンマークの著名な映画監督ラース・フォン・トリアーの作品ほど殺伐、暗澹とした雰囲気ではないので、比較的広く受け入れられそうな作品かと思います。

……ということで、この作品、私は大好きです。何より主要な4人の登場人物がみんな愛すべき人たちだからです。各々が、思うようにならない人生に悩み、苦しみ、傷つき、かなり切羽詰まった状況にあるのですが、どこかしら大らかなところがあって、観る者の気持ちを落ち着かせてくれます。その大らかさは、たぶん彼らの現実を静かに受け容れる態度に由来しているのだろうと思います。(ハリウッドのよくあるヒューマンドラマのように)ポジティブに幸せを追い求めたり、困難を打開するという訳ではなく、かといってネガティブに打ちひしがれたままという訳でもなく、その中間のところで踏み止まって、あくまで自然体と言うか、なりゆき任せで生きている佇まいが彼らの魅力であり、それを大袈裟でなく淡々と描いているところがこの作品の美点のような気がします(この種の諦観にどこか日本人的なものを感じます。それで余計に彼らにシンパシーを感じ、応援したくなるのかもしれません)。

多難な日常の中で彼らの孤独な心が共鳴し合って次第に家族になっていく様子はなかなか見応えがあって、心安らぐものがあります。結末も素敵で、「あゝ、良いものを見せてもらったなぁ」とちょっぴり幸せな気分が味わえます。

地味で渋い小品ですが、ささやかな勇気がもらえる、とても良く出来た、素敵な作品だと思います。