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🔵映画「オリーブの樹は呼んでいる」感想*命を繋ぐオリーブの樹*(2016スペイン)レビュー3.8点

オリーブの樹は呼んでいる [DVD]

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【威風堂々のオリーブの樹】

お久しぶりです!

長々とサボっていたので、“とうとうポックリ逝ったか?”と思われた方もおいでかもしれませんが……ドッコイ生きとります!→サバイバル・ライフw

この間恥ずかしながら、YouTubeにどっぷりハマっておりました。YouTubeは“今”を実感できるところがいいですね。世界を近くに感じられるし、若い人達のビビッドなコメント力にも感心します。アナログ世代のオッサンとしてはただただ、凄い時代になったもんだ、と驚嘆するばかりです。

……とは言え、見たいものだけ見て、聞きたいものだけ聞くというのでは視野は広がらないと思い、久々に原点に立ち帰ってみることにしました。

再開第一弾は、最近のスペイン映画です。スペインは闘牛やフラメンコなどで情熱的な国のイメージがありますが、映画の方はそのイメージとは裏腹に結構シリアスでヘビィな作品が多いような気がします(『トーク・トゥ・ハー』『永遠の子供たち』『あなたなら言える秘密のこと』『パンズ・ラビリンス』等々)。まあ、人生を楽しむことにかけては人後に落ちないイタリア人でさえ、沢山のクソ真面目な映画を作っていますから、スペインだけが落差が大きい訳でもないのでしょうが……。

この作品もそういう意味で少し翳のあるドラマと言えますが、コメディ的要素が随所に盛り込まれているので、他のスペイン映画に比べると割とライトで、比較的リラックスして観られる類の映画かなと思います。

【あらすじ】

舞台はオリーブの樹が整然と広がるスペインの片田舎。そこに住むオリーブ農場主の20歳になる娘アルマがこの物語のヒロインです。

農場主(アルマの父)は経営難のため、一家に代々伝わる樹齢2000年のオリーブの樹を売り払ってしまいます。人生をその巨木と共に生きて来たおじいちゃんと幼い頃からおじいちゃん子のアルマは、農場主を激しく責め立て、祖父と父、父と娘の関係は最悪の状態に陥ります。特におじいちゃんの憔悴ぶりはひどく、ショックのあまり言葉を発することさえできなくなってしまいます。

そんなおじいちゃんを見かねたアルマは、オリーブの樹を取り戻そうと決意し、その行方を追います。やがて、オリーブの樹がドイツにあることを知ったアルマは、風変わりな叔父さんとお人好しの同僚を嘘で丸め込み、3人でのドイツ行きを決行するのですが……。

【感想・レビュー】

オリーブの樹って、こんなに大きくなるものなんですね。威風堂々としてます。まずそれにびっくりです(何となくガジュマルの巨木を想起させます)。

この作品は、家族の断絶と再生を描いたドラマで、スペインからドイツへの旅を描いたロード・ムービーでもあります。祖父、父、アルマ、叔父さん、アルマの同僚、それぞれが人生に挫折し、心に澱のような哀しみを湛えています。その様が少しヘビィですが、それを和らげているのがアルマのキャラと、おじいちゃんとアルマの微笑ましい交流です。勝気で扱いにくく、いつもトラブルばかりのアルマですが、おじいちゃんを想う気持ちは人一倍。その一途さと、それにほだされる周囲の人たちの優しさに、ついついホロリとさせられます。やっぱり人情は万国共通ですね。それにしても、資金も作戦もなく、よくもまあドイツまで出かけるもんだ、と彼女の無鉄砲ぶりに呆れるやら、感心するやら(スペイン人は総じて行動的と聞いたことがありますが、それにしても……)。

また、サブキャラの叔父さんもいい味出してます。彼は人生の負け組の典型のような中年男なのですが、悪態や罵詈雑言の中にもユーモアやペーソスが滲み出ていて、憎めないオッサンです。こういうのを愛嬌って言うんでしょうね。また、彼の台詞の端々に、ドイツへの対抗心や嫉妬心、劣等感などの屈折した感情が垣間見えて、あゝ、やっぱりヨーロッパって複雑なんだと改めて気付かされます。

この作品、ストーリーがよく出来ていて、なかなかの良作だと思います。ただ、序、中盤まではとても面白い展開なのに、終盤の幕切れが無理に話をまとめた感があって、やや唐突というか、あっけない印象が残るのが惜しいところかなと思います。