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🔵映画「秘密の花園」感想*イギリスの伝統と格式を感じさせる品の良い作品*(1993アメリカ)レビュー4.0点

秘密の花園 [DVD]

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【英国の伝統と格式】

原作は『小公子』『少公女』で有名なアメリカ(イギリス出身)の児童文学作家F・バーネットの同名小説。

イギリスの伝統と格式を感じさせる品の良い映画。ヨークシャーの風景美が素晴らしく、荒涼たる原野が広がる冬の風景と矢車草やバラの咲き乱れる春の風景が息を呑むほどに美しい。

【あらすじ】

19世紀後半のイギリス領インドで生まれ育ったメアリーは、10歳のとき、大地震で両親を亡くし、イギリス、ヨークシャーの伯父の館に引き取られる。

両親の愛を知らず、傲慢で我儘に育ったメアリーは、メイド頭のメドロック夫人とことごとく対立し、孤立を深めていく。

そんなメアリーを救ってくれたのは、メイドのマーサとその弟の牧童のディコン、そして病弱で引きこもりのいとこのコリン。

ある日、メアリーは、10年前に亡くなった伯母(コリンの母親)がこよなく愛し、亡くなって以来、伯父の手によって閉鎖されていた『秘密の花園』の鍵を見つけ、その扉を開ける。

メアリーとディコンは、荒れ果てていた『秘密の花園』を蘇らせるため、土を耕し、花の種を蒔く。その後、コリンもそれに加わって、互いの親交を深めていく。

一方、コリンの父親(メアリーの伯父)は、亡き妻の想い出やコリンの病気に耐えられず、心を閉ざしたまま館の外に逃避していた。

やがて、すっかり体調を回復したコリンは、父親との対面を強く望むようになる。そんなコリンの願いに引き寄せられるかのように、父親は館に戻り、コリンとメアリーがいる『秘密の花園』に恐る恐る足を踏み入れる……。

【感想・レビュー】

冒頭の10分で、“なんちゅう、いばりくさった小憎たらしい小娘!”と腹が立って、一瞬観るのを止めようかと思ってしまった映画。“大して可愛くもないのに、生意気な……”とブツブツ文句を言いながら(大人げない)。

しかし、これはメアリーの心の成長の物語。両親の愛を知らず、メイドにかしずかれて、ワガママいっぱいに育ったメアリーに他人の気持ちが分からないのは当然かもしれない(……と、途中から少し冷静になる)。

期待したとおり?メアリーは、マーサ、ディコン、コリンらとの交流を通して、少しずつ心を開いていく。そこで印象に残るのは、メアリーとコリンが言い争うシーンとメアリーが荒れ果てた「秘密の花園」を蘇らせていくシーンだ。

メアリーは自分と同じ境遇のコリンを見て孤独が癒されたのか、あるいは似た者同士の彼との言い争いによって生まれて初めて(鏡に映った自分の姿を見るように)自分の内面に向き合えるようになったのか、その後は明らかに思いやりのある少女へと変わっていく。そんなメアリーの心の変化を象徴的に表しているのが「秘密の花園」なのだろう。荒れた花園を耕し、種を蒔き、手入れをし、色とりどりの花を咲かせる行為は、彼女の心の成長のプロセスをそのままなぞっているかのように見える。

ラストのコリンと父親の対面シーンも感動的だ。ハッピーエンドのはずなのに泣きじゃくるメアリーを見て、“ああ、やっぱり良い子なんだ!”と思って、彼女がたまらなくいじらしくなってしまう(変わり身が早い)。

メドロック夫人役のマギー・スミスはここでも健在。伝統的英国人女性のイメージは彼女によって作られたのでは、と思えるほど見事に役にハマっている。そして、メアリーのママ。えらくキレイな人だなあと思ったら、なんと『ふたりのベロニカ』のイレーヌ・ジャコブ。今回は残念ながらチョイ役での出演だが、イレーヌ嬢の麗しい姿を拝めただけで満足の一作(やっぱり、単純なオヤジ!)。