🔵映画「月の輝く夜に」感想*不器用な大人のための恋愛映画*(1987アメリカ)レビュー4.2点
【不器用な大人のための恋愛映画】
大人の悲喜こもごもの人間模様をコミカルに描いたラブコメ映画。人生のちょっとした修羅場をカラッと明るく描いているところがいい。登場人物の全員がとてもチャーミングで、気の利いたセリフもgoo!
イタリアンテイスト満載のおじいちゃんが月を見上げて言う……『月は、女に恋の魔法をかける。月の光には魔力が潜んでる』……なるほど、そうなのか。
【あらすじ】
ニューヨークのイタリア人街に住むロレッタは、父母と祖父の4人暮らし。
7年前に30歳で未亡人となったロレッタは、ある夜、友人のジョニーからプロポーズされる。恋より安定を求める彼女は、プロポーズを快諾するが、両親はあまり祝福してくれない。
そんな折、ジョニーに母親の危篤の知らせが。急遽イタリアへ向かうことになったジョニーは、空港での別れ際、ロレッタに『仲違いしている弟ロニーに、結婚式に出席するよう伝えてほしい』と頼み込む。
パン職人のロニーの店を訪れたロレッタは、ロニーに伝言を伝えるが、兄を逆恨みしているロニーは、激昂する。
ロレッタは、彼のアパートまで出向いて説得を続けるが、なぜか突然、二人の間に恋の炎が燃え上がる……。
【感想・レビュー】
登場人物はみんな中高年(若いのはロニーだけ)。不倫中の父親、他の男とデートをする母親、婚約者の弟を愛してしまった娘、そして犬と一緒に満月に吠えるおじいちゃん……みんないい年をして、ハチャメチャ。でも、それぞれが挫折感を抱え、生きることに臆病で、意外と?真面目。そこがとてもチャーミング。
幾つになっても悪あがきしたいお父さん、お父さんの気を惹きたいお母さん、分別のない恋心に慌てふためく娘……大人になってみると、彼らの気持ちがよく分かる。
“大人は分別がある”なんて、そもそも幻想で、分別などただ無難に生きていくための処世術にすぎないのかも。たぶん、人は幾つになっても、分別と衝動のボーダーでもがき苦しむ生き物なのだ。分別を失くした人は、本人にとっては悲劇、傍目には滑稽で愚かしく映るものだが、そんな悲喜こもごもがあってこその人生。だからこそ、人も人生も愛おしいのだと思う。ロレッタを見ていると、つくづくそのことを痛感する。
映画的には、ロレッタとロニーのオペラの観劇シーンが最高にロマンティック(ロレッタが感激のあまり涙を流すシーンは『プリティ・ウーマン』を彷彿とさせる)。ロニーがロレッタをオペラに誘うときのセリフもシャレている。……『今夜オペラに付き合って』→『何のつもり?』→『僕には愛するものが2つある。君とオペラだ。一晩で2つ楽しめたらきっぱりあきらめる。君への想いを断ち切るよ』→『分かった。じゃあ行くわ』……お見事!
これは、ラブコメのジャンルを超えた結構渋い人間ドラマ。大人の恋はこうでなくっちゃ!