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🔵映画「シャンドライの恋」感想*ベルトルッチの耽美の世界*(1998イタリア)レビュー4.0点

シャンドライの恋 HDリマスター版(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [Blu-ray]

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【ベルトルッチの耽美の世界】

愛する女のために全てを差し出す男の姿を通して、愛の本質を問う作品。

男女のギリギリの恋を描いて、いかにもベルトルッチ監督らしい、妥協のない一作。

【あらすじ】

政治犯として夫を突然逮捕されたシャンドライは、アフリカからイタリア、ローマへと渡り、医学生として勉強ながら、イギリス人ピアニスト、キンスキーの屋敷で住込み家政婦として働き始める。

やがて、キンスキーはシャンドライに惹かれるようになり、彼女に『何でもするから結婚してくれ』と告白するが、彼女は『何でもすると言うのなら、刑務所にいる夫を返して!』と言って、拒絶する。

その後、キンスキーは、屋敷内の貴重な美術品を次々と売りに出す。そして最後は大切なピアノまで……彼はシャンドライの夫を解放してもらうための資金を作っていたのだった。

愛のために全てを差し出そうとするキンスキーの想いに触れ、シャンドライの心は激しく揺れ動く。しかし、皮肉にも、キンスキーの働きかけが奏功して、彼女の夫は解放されることになる。そして遂に夫がローマを訪ねてくる日がやってくる。

はたしてシャンドライは、夫とキンスキーのどちらを選ぶのか……。

【感想・レビュー】

国境や肌の色を超えた、根源的で濃密な恋愛ドラマ。

夫を裏切る理由がないのにキンスキー(デヴィド・シューリス)への想いに揺れるシャンドライ(ダンディ・ニュートン)、報われないと知りながらシャンドライに全てを差し出さずにいられないキンスキー……そんな愛の不条理を深く追求した耽美的な作品。

彼女は夫の元に戻るのか、キンスキーの想いに応えるのか、その結末は結局、曖昧なままになっている。シャンドライが決めるはずの究極の選択を観る者に委ねているところがこの作品のミソなのだろう(観る者の答次第でその恋愛観が分かるような気もする)。これはこれで印象に残る、優れたラストシーンだと思う。

この映画、会話は極端に少ない。その代わり、シャンドライとキンスキーの表情や仕草、屋敷の螺旋階段、一輪の蘭など、一つ一つの映像が言葉以上に饒舌に彼らの胸中を物語っていて、改めてベルトルッチの映像作家としての才能に舌を巻く。

“目は口ほどに物を言う”……万感の想いを目で語るデヴィト・シューリスとダンディ・ニュートンの演技は見事の一言に尽きる。

キンスキーの訴えるような眼差しとシャンドライのセクシーな瞳が強く印象に残る一作。