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🔵映画「おじいちゃんの里帰り」感想*家族愛を大らかな眼差しで描いた秀作*(2011ドイツ,トルコ)レビュー4.3点

おじいちゃんの里帰り [DVD]

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【家族の絆を紡ぐ無償の愛】

観る者を幸せな気持ちにしてくれる映画。

移民問題、異文化交流、家族の絆、人間のアイデンティティなど、様々なテーマに触れつつ、家族愛を大らかな眼差しで描いた秀作。

【あらすじ】

1960年代、トルコのフセイン一家は経済成長著しいドイツに労働者移民として移住する。

それから50年、がむしゃらに働き続けたフセインも、今や孫までいる大家族のおじいちゃん。

フセインは突然、「トルコに家を買った。今度の休暇は家族全員で里帰りする」と宣言する。ドイツで生まれ育った子や孫たちは、困惑しつつも、フセインの勢いに押し切られ、しぶしぶその提案を受け入れる。

そして、3世代10人の大家族の様々な想いを乗せたマイクロバスは、一路トルコに向けて走り出す……。

【感想・レビュー】

この映画のヒーローは、何と言ってもフセインじいちゃん。頑固で偏屈だけれど、家族思いで温かい……このおじいちゃん、いかにも一家の大黒柱、家長という感じで、一昔前の日本のおとうさんを思い出して、懐かしさと同時にシンパシーを感じてしまう(情感とか気質が似ているのかも。トルコ人と日本人の相性の良さもなるほどと納得)。

また、おじいちゃん、おばあちゃんと孫たちの関係がいい。ほのぼのとして温かく、心が癒やされる。最も印象的なのは、思わぬ妊娠に悩む孫娘を、おじいちゃんとおばあちゃんがやんわり諭し、いたわり、励ますシーン。彼らの言葉には長年の風雪に耐えてきた者特有の重みがある。そこに父母からでは決して得られない祖父母の無償の愛を感じて、ついついジーンとなってしまう。やっぱりおじいちゃんの魅力は“懐の深さ”だなあ。おばあちゃんも大地のように逞しく、しかもオチャメで愛らしい。こういう映画を観ると、3世代家族っていいもんだとしみじみ思う。

父から子、子から孫へと連綿と受け継がれていく血(アイデンティティ)と家族の歴史は、たとえそれが劇的なものでなくても、十分感動的だ(平凡だからこそ普遍的といえるのかもしれない)。そして、それが人にとってどれだけ感動的なものであるかは、劇中の次の言葉に収斂される。

 『“我々とは何か”の質問にある賢者は答えた。……我々とは先代の出来事の集約で、目の前で起こった出来事や被った事の集約である。我々とは、我々に影響を与えた人や存在か我々が影響を与えた物。我々とは、我々が消えた後の出来事で我々なくして起こり得ない事すべて』 

……今ここに自分が在ることの意味を深く考えさせられる、含蓄のある言葉だと思う。