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🔵映画「山」感想*山岳映画の隠れた名作*(1956アメリカ)レビュー4.2点

山 [DVD]

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【山岳映画の隠れた名作】

断崖絶壁を攀じ登るクライミングシーンが圧巻の山岳映画。

スペンサー・トレイシーが渋い!

【あらすじ】

アルプスの山中に飛行機が墜落する。直ちに救助隊が編成されるが、滑落事故が発生し、彼らは救助を断念する。

飛行機が大金を積んでいるという噂を聞いたクリスは、元山岳ガイドの兄ザカリーに、一緒に山に登って大金をせしめようと持ちかける。

思慮深く正直者のザカリーはクリスに、冬山の危険性を説き、その浅ましい考えを厳しく非難するが、欲に目が眩んだクリスは聞く耳を持たない。

一人でも登ると言い張るクリスの身を案じたザカリーは、やむなく危険極まりない冬山の登攀を決意するが……。

【感想・レビュー】 

登山と兄弟愛をテーマにした、骨太でシンプルな映画。一番の見どころは、やはりザカリーが(ほぼ)体一つで挑むクライミングシーンだろう。

頭上は切り立った断崖絶壁、眼下は遥かに霞む地上の風景。ザカリーは、岩のわずかな突起や隙間を指で捉えながら、少しずつ上へ上へと進んでいく。その荒い息遣いや吹き出る汗が何ともリアルで、ザカリーの緊張感がひしひしと伝わってくる。この手作り感こそが実写の魅力、CGでは出せない迫力がある。

そして、もう一つの見せ場は、ザカリーの弟への愛が滲むラストシーン。余りにも実直、余りにも不器用な男の嘘が観る者の胸を締め付ける。

ザカリーを演じるのは名優スペンサー・トレイシー。『老人と海』の老漁師役が印象深いが、こちらもハマリ役。彼の赤銅色に焼けた顔、分厚い胸板は、老いても執念をたぎらせる漁師や登山家の役が本当によく似合っている。

一方、向こう見ずで野心家のクリスを演じるのは若き日のロバート・ワーグナー(ナタリー・ウッドの夫)。二枚目だが、どこか野卑な印象のある役者で、これまた適役。

兄弟間の葛藤や対立、スリリングなクライミングシーンが描かれて緊張感のある映画だが、それを和らげているのが、ザカリーに堂々と結婚を迫る近所のおばちゃん。照れて逃げまくるザカリーが何とも可愛らしい。