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🔵映画「さすらいの青春」感想*文学の香気漂う格調高い逸品*(1966フランス)レビュー4.6点

さすらいの青春 [DVD]

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【文学の香気漂う格調高い逸品】

恋と友情の狭間をさすらう青春の痛みを格調高く描いたフランス青春映画の至高の名作。

繊細で優美、詩的で幻想的なその作品世界の美しさにしばし陶然とし、そして、溜息が漏れる。

素晴らしい!その一言に尽きる傑作。

【あらすじ】

舞台は、森と沼が点在する美しい自然に囲まれたフランス、ソローニュ地方サント・アガット。教員の両親と学校で暮らすフランソワは、転校生のモーヌと仲良くなる。

ある日、モーヌは突然失踪し、3日後に戻ってくる。彼はフランソワに、森の中で城のようなで邸宅に迷い込み、邸宅の息子フランツの結婚パーティに参加したこと、フランツの花嫁がパーティに現れなかったこと、そして、フランツの姉イヴォンヌと出会い、恋に落ちたことを打ち明ける。

それ以来、モーヌは、イヴォンヌとの再会を夢見て、憑かれたように彼女の行方を追う。

その後、フランツから、イヴォンヌのパリの住所を聞き出したモーヌは、すぐさまパリに転校し、その場所を訪ねる。

しかし、そこで出会ったのは、フランツの花嫁になるはずの女性だった……。

【感想・レビュー】

青年の不実が招く幼い恋の悲劇的顛末を描いたゴールズワージーの名作『林檎の木』を彷彿とさせる作品。どちらの作品も、ただただ切なく、ひたすら美しい。

本作で描かれるのは、モーヌとイヴォンヌの切ない恋と、イヴォンヌに寄せるフランソワの淡い想い、そして、モーヌとフランソワとフランツの固い友情。

物語は、モーヌの恋の一部始終を親友のフランソワが見届ける形で展開する。

モーヌのイヴォンヌへの切実な憧れやフランツへの律儀なまでの友情、絶望の果ての彼らへの裏切りは、愚かしくはあるが、彼の想いが一途で純粋であるだけに、その切々とした痛みが、観る者の胸を突く。

何か得体の知れない熱情に駆り立てられ、後先考えず突っ走って、挫折し、傷つき、傷つけられ……若さとは、つくづく厄介なものだと思う。だが、一方で、若さ故の真っ直ぐな想いは、打算や妥協がないだけに、眩しくもあり、愛おしくもある。

若さは、未熟だからこそ愛おしく、愚かだからこそ美しい。モーヌを見ていると、しみじみとそう思う(その愚かさを嗤う人は、この映画は合わないと思う)。

この作品でひときわ目を惹くのは、淡く柔らなトーンの映像美。深く静かな森、森の緑を映す沼、花咲く草原、戯れる恋人たち……全ての風景が、夢の中の光景のように朧げで、水彩画のように美しい。

イヴォンヌを演じるのは『禁じられた遊び』の名子役、ブリジット・フォッセー(その清楚な面立ちの中に「ミシェール!ミシェール!」と泣いていた美少女の面影が微かに残っていて、懐かしい)。彼女の物憂げで儚い佇まいが、この映画に一層の奥行と陰影を与えているように感じられる。

そして、静かなラスト。フランソワに別れを告げたモーヌはどこへ行ったのだろう。時は流れ、人は変わる。それでも永遠に変わらぬ想いがある……鑑賞後、そんな想念が胸をよぎる感銘深い一作。