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🔵映画「三人の妻へ手紙」感想*脚本の冴えと演出の妙が光る、含蓄に富んだ一作*(1949アメリカ)レビュー4.2点

三人の妻への手紙 [Blu-ray]

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【夫婦関係の機微を巧みに捉えたドラマ】

ハリウッド黄金期のジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作品。同監督の翌年の傑作『イヴの総て』と同様、女性の描き方の巧さに唸る。

脚本の冴えと演出の妙が光る、含蓄に富んだ一作。

【あらすじ】

舞台はニューヨーク近郊の高級住宅街。デボラ、リタ、ローラメイの三人の妻たちは、ボランティア活動で子供たちと遊覧船に乗ってピクニックに出かけるが、乗船の直前、三人宛の一通の手紙が届く。

『私、三人のうちの誰かのご主人と駆け落ちします』と記されたその手紙の差出人は、噂の美女アディ。アディは三人の夫たちの古くからの知り合いで、彼らの憧れの的だった。

それぞれ夫婦の間に隙間風が吹いている妻たちは、心中穏やかでなく、ピクニックの間中、気もそぞろ。ピクニックを終え、一目散に帰宅して、夫の所在を確認するのだが……。

【感想・レビュー】

ミステリーとも、コメディとも、恋愛映画ともとれそうな、豊潤な人間ドラマ。ミステリアスな美女の計略に翻弄される平凡な三人の女(と言っても、彼女たちもかなり美しい)の複雑な胸中を、ときにシリアスに、ときにコミカルに映し出す。

語り手である噂の美女アディはなかなか姿を現さないが、その分かえって彼女の神秘性が増して、観る者の想像力を掻き立てる。その演出の妙は、さすがマンキーウィッツの感がある。

また、三人の妻たちの人物造形も素晴らしい。貧農の出自にコンプレックスを抱くデボラ、家庭より仕事優先の野心家リタ。年上の資産家を籠絡した計算高い女ローラメイ。それぞれ個性的ではあるが、アディと比べると平凡で、共感できる存在だ。

手紙を受け取った妻たちの胸中をよぎる、不安、反省、後悔、夫への慈しみ……。そして、そんな彼女たちを優しく受け容れる夫たち。愛だとか恋だとかを正面きって語らなくても分かり合える関係がそこにある。何でも言葉にして直ぐに答を出したがる今時の風潮からすると随分おっとりとしてもどかしくも感じるが、古風で素敵だと思う。

有名どころの俳優はカーク・ダグラスぐらいだが、三人の女優の火花散る演技も見どころの一つ。さりげない会話の中にも微かな毒が含まれていて、仲良しだけれど気が抜けない、という女性同士の甘くない友人関係が見事に表現されている。

ラストの、アディのオチの一言も完璧!