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🔴本「暗黒女子」感想*内容はどす黒いが、不快感はない。ミステリーホラーの秀作*秋吉理香子(双葉文庫)レビュー4.1点

暗黒女子 (双葉文庫)

暗黒女子 (双葉文庫)

【新時代のイヤミス】

斬新な構成、凝った趣向、そして驚愕の結末に作者の確かな才能を感じる、新時代の“イヤミス”。

内容はどす黒いが、一種独特の耽美的な趣もあって、不思議と不快感はない。

たまにはこういうテイストの物語も悪くない。

【あらすじ】

名門女子校のミューズとして君臨する美しい女生徒が死んだ。

その一週間後、彼女が主宰していた文学サークルで、定例闇鍋朗読会と銘打った、闇鍋を突きながら彼女の死の真相を語る会が催される。

しかし、そこで披露されたメンバーの証言は、それぞれ大きく食い違っていた。

自殺か他殺か、彼女が手にしていたすずらんの花は一体何を意味しているのか……会が進むにつれ、謎は益々膨らんでいく。

果たして、彼女の死の真相は?

【感想・レビュー】

どんでん返しに次ぐどんでん返し。ラストの強烈な一撃に予想はあっけなく裏切られ、“イヤミス”なのにむしろサバサバした気分。

名門女子校を舞台にしたダーク・ファンタジー的趣向の作品だが、中身はダークを通り越して、ひたすらブラック。そのインパクトの強烈さは、湊かなえのデビュー作「告白」級かもしれない。

美しく残酷なストーリーもさることながら、心惹かれるのは文学サークルの少女たち。この作家、キャラの拵え方が本当に巧く、彼女たちは皆個性的で美しく、可憐そのもの(根っからの性悪女はいない)。その分、彼女たちの行為の冷酷さが際立って、おぞましくもあり、耽美的でもある。

無垢の天使たちの悪魔の所業……そのアンバランスが、この作品の最大の魅力だろう。

余りにも真っ直で痛々しいほど潔癖、それゆえ、思い詰めたら何事も恐れない……そんな無垢で残酷な少女の二面性をこの作家は冷徹な筆致で見事に描き切っている。

これはミステリーホラーの秀作。なかなか大した作家だと思う。