お気楽CINEMA&BOOK天国♪

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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔵映画「ぼくの大切なともだち」感想*人と人の絆の大切さに触れて、心がジワリと温かくなる一作*(2006フランス)レビュー4.2点

ぼくの大切なともだち (完全受注5,000本限定生産) [DVD]

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【ズレまくり中年男の必死の友だち探し】

不器用な男たちのぎこちない友情をコミカルに描いたヒューマンドラマの佳作。人と人の絆の大切さに触れて、心がジワリと温かくなる一作。

【あらすじ】 

知人たちから、『お前には親友はいない。お前の葬式には誰も来ない』と言われ、ショックを受けた敏腕美術商のフランソワは、『10日以内に親友を紹介する。20万ユーロの壺を賭ける』と大見栄を切る。

それから、フランソワの友だち探しが始まるが、親友と思っていた知人たち全員から冷たくあしらわれ、初めて自分が皆から嫌われていたことを知る。

どうしたら友だちが出来るのか、悩んだフランソワは、気の良いタクシー運転手ブリュノに目を付け、友だち作りのコツを伝授してもらうが、なかなか成果が上がらない。

やがて二人は、悩みを分かち合ううち少しずつ親密になっていくが、フランソワのある(無神経な)企てが、ブリュノをひどく傷付けてしまう……。

【感想・レビュー】

フランソワに限らず、成功した中年男というのは、どこか致命的にズレたタイプの人間が多いような気がする。フランソワは、自己チューで野心家、周囲への思い遣りがなく、自分が嫌われている自覚さえない、“ズレまくりの嫌な奴”。「こんな奴、いる、いる」なんて、思わず苦笑するが、フランソワの場合、愛嬌がある点が救われる。あまりにも不器用なやり方で友だち作りに奔走する彼の姿は、愚かで滑稽の極みだが、なぜか愛おしくもある(つまるところ、人の魅力というものは、男女を問わず「愛嬌があるか、ないか」に尽きるような気がする)。

一方、ブリュノは、無類のお人好しで、傷付けられてばかりの人生。不運を絵に描いたような彼の人生が一瞬輝く“クイズミリオネア”のシーンは、思わず応援に力が入ってしまう。彼の成功をさり気なくフォローするフランソワの心遣いに彼の人間的成長が窺えて、ちょっと泣ける。この辺りの心憎い演出がパトリス・ルコント監督の持ち味だろうか。フランソワに反撥しながらも彼の変化を秘かに喜ぶ娘や共同経営者の女性の温かな眼差しも好印象。

人と人との絆をキメ細かく描いた、いかにもフランス的な人間喜劇(テーマといい、雰囲気といい、名作「画家と庭師とカンパーニュ」を彷彿とさせる。こちらも主演はダニエル・オートゥイユ)。ラストシーンもジワリと胸に染みて、温かく心地好い。