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🔵映画「ぼくとアールと彼女のさよなら」感想*監督のセンスが光る、自然体で撮られた青春映画の佳作*(2015アメリカ)レビュー4.1点

ぼくとアールと彼女のさよなら(特別編) [DVD]

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【フレッシュ&リアル&等身大】

気負いも衒いもなく、自然体で撮られた青春映画の佳作。随所に監督のセンスが光る。これだからアメリカ映画は侮れない。

【あらすじ】

自意識過剰で自己嫌悪に悩む映画オタクの高校生グレッグは幼い頃からの遊び仲間のアールと、パロディ映画を作るのが唯一の趣味。

ある日、グレッグは母親から、同級生のレイチェルが白血病になったと聞かされ、彼女の話し相手になるよう強制される。初めはぎこちなかったグレッグだが、徐々にレイチェルと打ち解け、二人の間に奇妙な友情が芽生えていく。

そして、グレッグは彼女を励ますため、映画の新作に取り掛かるが、彼女の病状は次第に悪化していく……。

【感想・レビュー】

少し切ないストーリーだが、ベタッとした締めっぽさはなく、テイストは、「(500)日のサマー」や「最低で最高のサリー」に似て、ドライでライト。日本であれば、涙、涙で終わりそうな物語を、サラッとコミカルに仕上げて、清涼感すら醸し出すセンスは、アメリカ映画ならではだろう。

この映画、2015サンダンス映画祭のグランプリ&観客賞受賞作品らしい(なのに日本では劇場未公開?)が、観るほどに、なるほどと納得。

何よりグレッグのキャラクターが面白い。他人との関わりを避け、自分の殻に閉じ籠る極端に自意識過剰な少年は、幼馴染のアールを(“友だち”と言わず)“仕事仲間”と表現し、周囲の女の子を無神経なヘラジカに例え、自分をそのヘラジカに踏み潰されるシマリスに例える。そのナイーブな発想がいかにも10代の男の子らしくて、好感が持てる。

賢くてしっかり者のレイチェルの存在感も格別。彼女の存在は、観る者の胸に、一迅の涼風が吹き渡った後のような清冽な余韻を残す。

また、印象的なのは、グレッグとレイチェルの関係。この二人の微妙な距離感が何とも新鮮。ありがちな男の子と女の子の恋物語の形を避け、最後まで(一定の距離感を保ったまま)ピュアな友情物語で押し通したところに、この監督の上品さや非凡なセンスが感じられる。

グレッグ&アール制作のパロディ作品も見どころの一つ(ユニークでお洒落!)。個人的には、『アギーレ〜神の怒り/(1972西ドイツ)』(ヴェルナー・ヘルツォーク監督)へのグレッグの入れ込みようにいたく共感。もうそれだけでこの監督にシンパシーを感じてしまう。