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🔵映画「星の旅人たち」感想*居間にいながら、壮大な巡礼の旅の追体験ができるロード・ムービーの秀作*(2010アメリカ, スペイン)レビュー4.2点

星の旅人たち [DVD]

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【旅は道連れ、世は情け】

人生に疲れた一行のサン=ジャック(フランス)からサンティアゴ(スペイン)までの800kmの巡礼の旅を描く。

何となく自分も一緒に旅をしている気分になってくるロード・ムービーの秀作。

【あらすじ】

カリフォルニアの初老の眼科医トムは、突然、フランス警察から息子の死を知らされ、急遽フランスへ。

息子は「世界を見たい」と言って、大学院を中退し、ヨーロッパへ渡ったばかりだった。フランス警察によると、彼はサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅に出た矢先に不慮の死を遂げたという。

息子がなぜ世界を見たいと言ったのか、なぜ巡礼の旅に出ようと思い立ったのか……日頃会話らしい会話がなく、その想いを計りかねるトムは、息子のバックパックに遺灰を詰め込み、彼に代わって巡礼の旅に出る……。

【感想・レビュー】

サンティアゴ・デ・コンポステーラはエルサレム、ローマと並ぶキリスト教三大聖地のひとつ(聖ヤコブが眠る地)。

この巡礼は、日本で言えば、四国八十八箇所巡りといったところか。どちらも、古い歴史があること、巡礼の目的を問わないこと、中継地に多くの宿泊所が設置されていること等々、共通点は多いが、サンティアゴ巡礼が、ピレネー山脈横断の旅であることや800kmに及ぶ長旅であることから、スケール感は全く異っている。実際、山と平原の繰り返しのかなり過酷な旅のようだ。

トムの同行者は、痩せるために歩きに来たというオランダ人の青年、タバコ絶ちのために歩いているというカナダ人のバツイチ女、スランプ中のアイルランド人の中年作家。

道中、ワケアリの四人組は、口論したり、酒を酌み交わしたり、様々な事件に遭遇したりしながら、次第に打ち解けていく(トムのバックパックを盗んだジプシーの少年の父親とトムの物静かな心の交流は特に印象的。ヨーロッパにおけるジプシーの立場も映像を通して何となく理解できる)。

そして、目的地に近づくに連れ、それぞれの表情や行動に変化が表れる(その様子は、体に回った毒素が少しずつ浄化されて、次第に体力が回復していくプロセスを見ているかのよう)。その変化のプロセスこそがこの映画の肝であり、見どころだろうと思う。

旅の終わりに彼らが手にしたものは、魂の浄化か、生きる歓びか、それとも生まれ変わった自分か……。新たな希望の光が差し込むラストは、安らぎに満ちていて感銘深く、四人組の新たな旅立ちを秘かに祝したい気持ちにさせられる。

居間にいながらにして、壮大な巡礼の旅の追体験ができるのだから、やはり映画は素晴らしい(実体験に勝るものはないが、さすがに800kmは……ムリ)。