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🔵映画「スイート・スイート・ビレッジ」感想*東欧の田舎の美しい田園風景と村人たちの温かい人情が見どころ*(1985チェコ)レビュー4.3点

スイート・スイート・ビレッジ イジー・メンツェル監督 [Blu-ray]

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それぞれの日常、それぞれの人生

チェコがまだチェコスロバキアであった時代の映画。(終焉間近の)社会主義体制下での村人たちの悲喜こもごもの日常をコミカルに描く。東欧の田舎の美しい田園風景と村人たちの温かい人情が見どころ。

【あらすじ】

舞台は、首都プラハの南にある小さな村。社会主義体制下の集団農場でコンビを組む、ちょっと頭の弱いオチクと彼の父親代わりの太っちょのパヴェクは、毎朝、仲良く農場に出勤。

しかし、オチクはいつもヘマばかり。ある日、とうとうパヴェクの怒りが爆発し、オチクに絶交を宣言する。

失意のオチクは、プラハへの移住を決めるが、オチクのことが心配でたまらない村人たちは、必死で彼を引き止めようとする……。

【感想・レビュー】

質素な村の素朴な住人たちの人情が心に染みるヒューマンドラマ。物語は、オチクとパヴェクの友情?を軸に、村人たちの日常の悲喜劇を織り交ぜながら、軽妙なテンポで進行する。

運転中いつも詩の朗読に夢中になって、クルマをぶつけてばかりの村医者、村の学校教師にフラレて自殺未遂をするパヴェクの息子、嫉妬深い夫の目を盗んで不倫に走る人妻……結構重たいエピソードが輻輳的に描かれるのだが、湿っぽい雰囲気は微塵もなく、むしろ全編に飄々とした可笑しさが漂っている。それはおそらく、村人たちの大らかな人間性や持ちつ持たれつの(運命共同体的)関係にある村人たちの親和性に起因するものだろう。窮屈な政治体制下にあっても、皆で助け合って日々の暮らしをとことん愉しもうという、チェコ人の心意気のようなものが随所に感じられて、心が和む(“第7階段のビール”のエピソードは特に秀逸!)。

それにしても、イジー・メンツェル監督の人間に対する温かい眼差しとケレン味のない自然な作風は“素晴らしい”の一言。人の善意を信じて疑わない人間肯定の作品は、観ていて本当に気持ちがいい。本作は、公開当時、世界中で評価されたという。その事実は、人間の本性が善であることを証明しているようにも思えて、素直に嬉しく思う。

地味で目立たない小品ではあるが、染み染みと“いい映画だなあ”と思える作品。機会があったら、是非お見逃しなく!