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🔵映画「PK(ピーケイ)」感想*多様な宗教の共存の道を、国境や民族、文化の壁を越えて世界に示している貴重な作品*(2014インド)レビュー4.1点

PK ピーケイ [Blu-ray]

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【神さまが行方不明?】

きっと、うまくいく」の監督&主演が再びタッグを組んだSFファンタジー系コメディ?ドラマ。ジャンルさえ混沌としているところが、いかにもボリウッドらしい。

【あらすじ】

留学先のベルギーで失恋を経験したジャグーは、インドに帰郷し、TVリポーターとして働くが、つまらないネタの取材ばかりでウンザリしている。

そんなある日、彼女は『神さまが行方不明』と書いたチラシを配っている“PK”(酔っ払い)と名乗る謎の青年に出会う。

ジャグーはPKに特ダネの匂いを嗅ぎ付け、取材を敢行するが、彼の話はおよそ信じられないものばかり。

しかし、神さまを必死に探すPKの純粋さに惹かれてTV出演させると、彼の(宗教に関する)シンプルな疑問は視聴者の大きな反響を呼ぶ。  

そして、事態は次第に“PK vs ヒンドゥ教導師”の様相を帯びていく……。

【感想・レビュー】

切ないラブストーリーの中に、親子愛、偏見、宗教問題など多様なテーマを織り込みながら、泣き笑いのツボを外すことなく一気にクライマックスまで引っ張っていく展開力は、さすがボリウッドの感がある。

社会的問題に斬り込んだ作品なだけに「きっと、うまくいく」ほどの爽快感や高揚感こそないものの、メッセージ性とエンタメ性のバランスのとれた、よく出来た作品ではある。

最も印象深いのは、PKが宗教家や宗教ビジネスの矛盾をシンプルな言葉で鋭く指摘する、PKとヒンドゥー教導師との対決シーンだろう。神のメッセージを自分に都合のいいように伝える宗教家の発言を“電話のかけ間違い”に例える発想は、特に秀逸だ。

『(宇宙の創造主たる神は人間の助けなど借りなくても自分の身は守れる)。神を守ると人間が言ったせいで、(爆弾テロで)兄貴は死んだ。靴だけが残った。神を守るのはよせ。でないと、この世は靴しか残らない。』

『(神に違いがあるのか?)。違いを作ったのは人間だ。これが地球で一番危険な“かけ間違い”だよ。人を殺し、人を引き裂く』

これらのPKの警句には、長年、テロや宗教対立、カースト差別などに苦しんできたインドならではの切実なメッセージが込められている(「ボンベイ」「ミルカ」「マイネーム・イズ・ハーン」などを観るとインドの宗教対立の根深さがよく分かる)。本作は、多様な宗教の共存の道を、国境や民族、文化の壁を越えて世界に示している点で、とても貴重な作品だと思う。

主演のアミール・カーンは「チェイス!」の頃から“耳の大きな人”というイメージだったので、本作の宇宙人役はまさにドンピシャの配役。共演のアヌーシュカ・シャルマー(「命ある限り」)は相変わらずヘン顔だけど、コケティッシュでキュート。ただ、お約束の歌と踊りについては、今回は可もなく不可もなしの印象(曲がイマイチ?)。

本作のような“シリアスなコメディ”を違和感なく成立させてしまうところがインド映画の凄さだろう。その振り幅の大きさにインド映画の可能性と魅力が潜んでいるように思う。