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🔵映画「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」感想*クラシックファンなら必見!*(2009カナダ)レビュー4.3点

グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独 [Blu-ray]

グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独 [Blu-ray]

【クラシックファンなら必見!】

50歳の若さでこの世を去った天才ピアニスト、グレン・グールドの生涯を、数々の映像とインタビューで綴ったドキュメンタリー・フィルム。

【感想・レビュー】
エキセントリックな言動、端正な容貌、創造性溢れる演奏で、世界を魅了した天才ピアニスト、グレン・グールド。

『楽曲を分解し、別の形に組み直したかのような前例のないアプローチ』と評されるように、彼の革新的な演奏は当時一大センセーションを巻き起こし、現在でもクラシックシーンに多大な影響を与え続けている。

バーンスタンインがグールドとの共演の際に語った言葉が印象に残る……『演奏の主導権は、指揮者にあるのか演奏家にあるのか。私は二度もグールドに主導権を譲った。しかしこれは私の音楽ではない』。この言葉に、グールドの稀有の才能に対する天才指揮者の複雑な胸中(プライド、リスペクト、嫉妬心、ライバル意識等々)が垣間見えて、とても興味深い。

音楽のド素人がグールドの演奏を語るのは、不遜だし、愚の骨頂でもあるのだが、感じたままを言うと、グールドのピアノは、音の粒の一つ一つがクリアーで弾力が際立っている感じがする。緩急自在のテンポも斬新で流麗だ。確かに、楽曲に新しいイメージ(生命)を吹き込んでいるような印象は強い(グールドのバッハは、何とも楽しい)。芸術の目的が「完璧に美しい小宇宙の創造」だとしたら、彼の演奏はまさに芸術そのものだと思う。

しかし、素人にとってより興味深いのは、彼の人間性。彼はしばしば“孤独な天才”と称される。それを匂わせる彼の発言がある……『理解を拒む人々を遠ざけて、小さな世界を築く。それが現実からの逃避かどうかは、誰にも分からない。その世界で安らぎが得られないなら、あとは破滅するしか道はない』……なんという峻烈な言葉だろう。

しかし、彼と親交のあった人たちの証言では、彼の神経質で気難しく風変わりな一面とともに、その人間的な魅力が好意的に語られる。中でも、彼の知的でユーモラスな一面、繊細で愛情深い一面に触れた元恋人たちの証言は、愛し愛され、孤独なだけではなかった彼の半生を知ることができて、救われる。

映画としての評価は正直よく分からないが、数多くの録音・録画を通して人間グールドの実像に迫ったという点で、大変よく出来たドキュメンタリーだと思う。“謎は謎のままに”という作り手のスタンスも、グールドへのリスペクトが感じられて、好感が持てる。