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🔵映画「画家と庭師とカンパーニュ」感想*「キリマンジャロの雪」と並ぶフランス映画の良作*(2007フランス)レビュー4.2点

画家と庭師とカンパーニュ [DVD]

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【永遠の友情】

フランスのカンパーニュ(田舎)を舞台に、画家と庭師の心温まる友情を描いたヒューマンドラマ。

【あらすじ】

都会の生活に疲れ、生まれ故郷に戻って来た画家は、荒れ放題の庭の手入れのため、庭師の募集広告を出す。

やって来たのは、幼い頃いたずらをして遊んだ幼馴染みの庭師。彼は、国鉄を退職した後、念願の庭師になったのだった。

現在離婚協議中の裕福な画家と、地元で家族と慎ましく暮らす庭師は、旧交を温め合い、次第にかけがえのない存在になっていく……。

【感想・レビュー】

何とも渋く、味わい深い映画。ドラマは、老境に差しかかった男たちの会話を中心に淡々と進行していく。

カンパーニュ(田舎)の緑豊かな自然と暖かな陽光に包まれて、画家と庭師は、過ぎた日の思い出を語り、今を語る。

実直で朴訥な庭師の言葉は、絵画への情熱や家族への愛情を失いかけていた画家の枯れた心を次第に潤していく(荒れた土壌に水をやり、種を蒔き、野菜を実らせる庭師の行為は、そのメタファーのようにも見える)。そのプロセスが淡々と描かれるところがいい。画家の庭師への想いが滲むラストも、大袈裟なところがなく、静かな味わいがあって、気持ちが癒やされる。

庭師が画家に、奥さん(彼は何故か妻を「奥さん」と呼ぶ。その微妙な言い回しがいい)とのニース旅行の思い出を語る回想シーンは、本作の白眉。年輪を重ねた夫婦は、浜辺にただ一緒に座っているだけで絵になるものだと気付かされるシーンだ。

この映画、庭師役のジャン=ピエール・ダルッサンがいい。労働者階級の実直な男を演じさせたらピカイチの存在で(「キリマンジャロの雪」でもそうだった。……「ル・アーブルの靴磨き」では警視役だったが)、まさに“いぶし銀”という言葉がピッタリの俳優だと思う。

本作は、「キリマンジャロの雪」と並ぶフランス映画の良作。視聴後しばらく経ってからじわじわと良さが伝わってくるタイプの映画だと思う。