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🔴本「もう年はとれない」感想*食えないじいさんの痛快ハードボイルド*ダニエル・フリードマン(創元社推理文庫)レビュー4.2点

もう年はとれない (創元推理文庫)

もう年はとれない (創元推理文庫)

【食えないじいさんの痛快ハードボイルド】

ナチの将校が隠した金の延べ棒の行方を追う伝説の元刑事の活躍を描くハードボイルド系ミステリー。

【あらすじ】

87歳の元殺人課刑事のバック・シャッツは、戦友の臨終に立ち会った際、捕虜収容所でバックに瀕死の重症を負わせたナチの将校が生きて逃亡したと聞かされる。将校は戦後、ナチの隠し財産である金の延べ棒を持って国外に脱出したという。

バックは孫のテキーラと共に、消えた将校の行方を追うが、金の延べ棒の存在が周囲に知れるにつれ、彼らの関係者が次々と殺されていく……。

【感想・レビュー】

犯人探しのミステリーとしてもよく出来ているが、本作は、主人公バックのキャラクターの魅力で読ませる作品。

体の自由が思うように利かず、認知症の兆候も見られる87歳のバック。彼は、死や老いに諦観を抱きつつも自分の信念を曲げず、気に食わない連中には痛烈な罵声や皮肉をぶちまける(その皮肉がユーモアたっぷりで何とも痛快!)。しかし、奥さんだけには頭が上がらない……。まるで悪童のまま年をとったような偏屈じいさんだ。

彼のキャラは、『グラン・トリノ』の主人公ウォルトを彷彿とさせるが、どことなく茶目っ気がある点でウォルトより更にチャーミングかもしれない。また、バックの刑事時代の武勇伝も、マグナム銃を容赦なくぶっ放す辺りが『ダーティ・ハリー』のハリー・キャラハン刑事を彷彿とさせる(この作家、クリント・イーストウッド作品の熱烈な信奉者と推察するが……)。

誰かが、「魅力的な老人の条件は、懐の深さと愛嬌」と言っていたが、本作を読むと、その通りと実感する。バックの場合、これに「冒険心」が加わるのだから、たとえヨボヨボ、ヨレヨレであっても、文句なしにカッコイイ(映画『世界最速のインディアン』や『ウォルター少年と、夏の休日』も同じ)。男ならかく老いたいものだと、つくづく思う。

老人の冒険を描いた小説としては『窓から逃げた100歳老人』が面白いが(抱腹絶倒のコメディ)、ハードボイルド派には本作の方がオススメ。いずれにせよ、じいさんがカッコイイ物語は本当に面白い。