【心に残る珠玉の映画】20作品紹介・レビュー
ようやく春到来ですね。春と言えば、桜。
『願わくは/花のもとにて/春死なむ/その如月の/望月のころ』(西行)
なんて口ずさみながら、一人花見を愉しんでいます。
さて、今回は、これまでに観た映画の中から、忘れられない作品、思い入れのある作品を20本選んで簡単に紹介します(趣味の押し売りをするつもりは毛頭ありません。退屈しのぎにでもなれば幸いです)。
単純に“好き嫌い”で選んでいますので、有名どころの作品がボロボロ抜けています。あしからずご了承を。
心に残る珠玉の映画20作品紹介・レビュー
№20
🔵続・夕陽のガンマン/(1966イタリア)
続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]
《善玉・悪玉・卑劣漢》
隠された20万ドルを巡る3人の男たちの虚虚実実の駆け引きを描く。
徹底的に“面白さ”だけを追求した娯楽作品。その割切りが、潔くていい。
クリント・イーストウッドが最高にクール。ラストの三つ巴の死闘は、全身の血が逆流して、アドレナリン全開!
満足感で、もう何も言うことはありません。
№19
🔵我が道を往く/(1944アメリカ)
《さりげない思いやり》
教会再建のために派遣された若くて進歩的な神父が、歌の力で周囲の人たちを変えていく様を描いた、善意と良心のドラマ。
若い神父の誠実で思いやりのある人柄とスマートな立ち居振舞いがこの作品に独特の品格をもたらしている。
頑固だが、オチャメで人間味溢れる老神父がまた、たまらなく可愛らしい。
№18
🔵バベットの晩餐会/(1987デンマーク)
《頑なな心を解きほぐす至高の料理》
19世紀のデンマークの寒村を舞台に、敬虔なプロテスタントの老姉妹と国を追われた元シェフのメイドの絆を描く。
堅苦しい教義に縛られた晩餐会の出席者たちが、メイドの料理の力で次第に心を解放していく。
料理を通して、人生の幸福とは何かを深く追求した逸品。
№17
🔵スモーク/(1995アメリカ,日本,ドイツ)
《人生はほろ苦いブルース》
ブルックリンの小さな煙草屋に集う男女が織りなす、渋くて、粋で、ほろ苦く、温かい群像劇。
虚と実を巧みに織り交ぜながら人生の真実を語る脚本、演出の妙は、見事の一言。
人肌の温もりに触れて、人生も捨てたもんじゃない、と思わせてくれる、滋味溢れる一作。
№16
🔵山の郵便(1999中国)
《息子が見つめる父の背中》
辺鄙な山岳地方の郵便配達人父子の物語。
老いた父の最後の配達に同行した息子は、あちこちの村で父の人生の足跡に触れ、父への理解を深めていく。
父を越えようとする息子と息子の成長を誇らしく思う父。息子が父を背負って川を渡るシーンにそれぞれの想いが収斂されて、静かで深い感動を呼ぶ。
№15
🔵冬冬の夏休み/(1984台湾)
《少年の日のスケッチ》
田舎の祖父母の元に預けられた都会育ちの幼い兄妹の一夏の体験を描く。
日常のささいな出来事を通して新しい世界に触れていく少年少女の瑞々しく伸びやかな心。失われた日々への郷愁が胸を突いて、鑑賞後はしばらく動けない。
「心の琴線に触れる」という言葉がピッタリの至福の映画。
№14
🔵遠い空の向こうに/(1999アメリカ)
《宇宙少年のアメリカン・ドリーム》
ロケット作りを夢見る宇宙少年の成長の物語。
夢を見ること、夢を追いかけることの大切さを描く。少年と炭鉱夫の父親の葛藤と和解、少年を信じ、支え、見守る先生の師弟愛が、温かい涙を誘う。
アメリカという国の懐の深さをしみじみと痛感する一作。
№13
🔵第三の男/(1949イギリス)
《光と影が織りなす芳醇なドラマ》
戦後の傷跡が痛々しく残るウィーンを舞台に、追う者と追われる者を描くサスペンスドラマ。
光と影の映像美とオーソン・ウェルズの存在感がハンパない。そして、あまりにも有名なラストの長回しのショット。枯葉散る並木道、歩いてくる女、道端に佇む男、交差する男と女……。
何もかもが完璧。参りました。
№12
🔵ショーシャンクの空に/(1994アメリカ)
《不屈の精神と人間の尊厳》
無実の罪で投獄された男の執念の脱獄劇。
巨悪とひ弱な正義との闘いを通して、人間の尊厳を描く。ややもすると安易に流れがちなテーマを重厚で崇高な人間ドラマまで高めた脚本、演出、映像の冴えに感服する。
ラストシーンは、映画史に残るカタルシス。
№11
🔵誓いの休暇/(1959ソ連)
《もし戦争がなかったら……》
心優しき少年兵の6日間の休暇中の出来事を通して、戦争の不条理を訴えた反戦映画。
軍用列車で知り合った美しい少女との淡い恋、母との束の間の再会と別れ……平和な時代であれば、幸せな暮らしが送れたであろう人々の哀切が胸に沁みる。
映画の出来も凄いが、あの時代のソ連でこんな映画を作った監督の気骨もまた、凄い。
№10
🔵踊れトスカーナ!/(1996イタリア)
《人生はブラーヴォ!》
イタリアンテイスト溢れる陽気なラブコメディ。
トスカーナの田舎町を舞台に、平凡な会計士の青年と美しいフラメンコダンサーの恋の行方と、周囲のおかしな面々が巻き起こす珍騒動を描く。
絶妙のギャグに笑い転げ、華麗なフラメンコダンスに心ときめき、一面黄色のヒマワリ畑に眼を奪われる。イタリアへの憧れが募る一作。
№9
🔵街の灯/(1931アメリカ)
《チャップリンは我が人生の師》
盲目の花売り娘に捧げる浮浪者の純情をユーモアとペーソスで描く。
抱腹絶倒のボクシングシーンを始め、この映画はチャップリン芸術の集大成とも言える作品。なにより貧しき者への愛に溢れている。
価値観がカネやモノに一元化する中で、それ以上に大切なものがあることを教えてくれる一作。
№8
🔵世界最速のインディアン/(2005ニュージーランド,アメリカ)
《男の生き方のバイブル》
バイクの世界最速記録を目指すニュージーランドのじいさんの挑戦を描いたトゥルーストーリー。
『ハートは17歳』……いつまでも少年の心を失わず、夢を追いかけるじいさんの勇姿にシビレまくる。
男たるもの、かくあるべし。これはもう、男のバイブルです。
№7
🔵ローマの休日/(1953アメリカ)
《永遠不滅のラブストーリー》
世界中を虜にしたオードリー・ヘップバーンの出世作。古都ローマを舞台に、小国の王女とアメリカの新聞記者の淡い恋を描く。
トキメキと切なさのロマンス映画は他にも数多くあるが、これを超える作品はもう現れないのでは。
オードリーの清楚な愛らしさは“妖精”そのもの。
№6
🔵愛に関する短いフィルム/(1988ポーランド)
《愛の深淵をのぞく》
向かいのアパートに住む女を、毎晩望遠鏡で覗く青年。そこには純粋な愛があるだけで、青年は女に何も求めない……。
愛や孤独といったとらえどころない感情の正体を見事に可視化したポーランド映画の傑作。
優れた短編小説を読んでいるかのよう。深いです。
№5
🔵きっと、うまくいく/(2009インド)
《マサラムービー、恐るべし!》
恋と友情、笑いと涙。映画の魅力をすべて詰め込んだ怒濤の170分。
若さゆえのシンプルなメッセージがストレートに胸を打つ。映画の王道はやっぱりエンタメです。観賞後は勇気凛々、元気百倍。
萎びた心に即効で効くユンケル的一作。
№4
🔵アルジェの戦い/(1966イタリア)
《魂を揺さぶる迫真のドラマ》
アルジェリア独立戦争をドキュメンタリータッチで描いた戦争映画の傑作。
記録映画さながらのクールなカメラワークが戦争のむごさを冷徹に写し取っていく。数万人のエキストラによるラストシーンは、ただただ凄いの一言。
安っぽい感動を超越した魂のドラマ。
№3
🔵ニュー・シネマ・パラダイス/(1989イタリア)
ニュー・シネマ・パラダイス SUPER HI-BIT EDITION [DVD]
《映画の魔法にかかるひととき》
溢れるほどの映画愛を詩情豊かな映像とノスタルジックな音楽で見事に表現した名作中の名作。
ラストシーンは、万感の想いが一気に押し寄せて、涙でスクリーンが曇るほど。
視覚でしか味わえない映画的感動がここにある。
№2
🔵ラヴソング/(1996香港)
《運命に導かれる恋》
胸に迫る想いを表情だけで語るマギー・チャンの演技が秀逸。
マンハッタンでの運命の再会シーン、全編をエモーショナルに彩るテレサ・テンの歌声も、完璧。
10年に及ぶ男女のピュアな恋に酔いしれる、恋愛映画の金字塔。
№1
🔵エル・スール/(1983スペイン)
《1カット1カットが一幅の絵》
父の人生の秘密に触れ、戸惑い、ときめく娘の心情を静謐なカメラワークで捉えた至高のドラマ。
陰影に富んだ映像と必要最少限の台詞が観客の想像力を否応なしに喚起する。
映画が総合芸術であることを世界に知らしめた傑作。