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🔵映画「妻への家路」*中国俳優陣のレベルの高さ、監督の表現力に感心*(2015中国)レビュー3.9点

妻への家路 [Blu-ray]

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チャン・イーモウ監督の作品で最も印象深いのは、華北の美しい村を舞台にした清冽なラブストーリー「初恋のきた道」。村から町へと続く長い1本道の映像が今でも記憶に焼き付いている。

本作も、「初恋のきた道」と同じく、(夫婦の)純愛を描いたドラマ。

【あらすじ】

時代は1970年代。文化大革命の終結により20年振りに解放された夫は、待ち侘びた妻との再会を果たすが、妻は心労が祟って夫の記憶だけを失くしていた。なんとか自分を思い出してほしい夫は、娘の助けを借りながら、様々な働きかけをするのだが……。

【感想・レビュー】

父親を密告した過去をいつまでも引きずる娘、娘の行為を許せないまま、夫の帰りを待ち続ける妻、そんな2人に罪の意識を感じる夫……歴史の動乱に翻弄されてバラバラになった家族の三者三様の想いが丹念に描かれて哀しみを誘うが、妻の看護を通して夫(父親)と娘が次第に打ち解けていく様や、夫が妻を献身的に支える姿に気持ちが和らぎ、救われる。中でも、夫が妻のために、昔よく弾いていたピアノ曲を聴かせるシーンや抑留中に自分が書いた妻宛ての手紙を読み聞かせるシーンなどは、夫の妻への想いの深さが切々と胸に沁みて、秀逸。

夫婦役のチェン・ダオミンとコン・リーの抑制の効いた静かな演技は、さすがの感がある。また、娘役の新人女優チャン・ホエウェンの小動物を思わせる可愛らしい顔立ちと瑞々しい演技も、印象深い(中国俳優陣のレベルの高さに感心する)。

無私、無償の愛(あるいは純愛)の形を新たな切り口で提示した一作。渋い佳作ではあるが、全体のトーンが暗いところ、ストーリー設定に若干無理があるところ、家族の生活感が希薄なところなどが、減点要素。……もっとも、様々な表現上の制約がある中で、このレベルの映画を作るチャン・イーモウの手腕は、なかなか大したものだとは思う。