お気楽CINEMA&BOOK天国♪

お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔵映画「ガス燈」*犯人探しを愉しむ映画ではなく、夫がポーラに仕掛けるトラップの凄味を味わう映画*(1944アメリカ)レビュー3.8点

ガス燈 [DVD]日本語吹き替え版

ガス燈 [DVD]日本語吹き替え版

イングリッド・バーグマンは、キラキラした瞳とツンと上を向いた鼻がいい。すました横顔がとてもチャーミングで、知性と気品を感じる女優だ。

本作の製作は1944年。第二次大戦の最中にこんな娯楽作品を作るなんて、今更ながら当時のアメリカの国力の凄さを思い知らされる(こんな国と戦争していたなんて!)。また、同じ年に、ナチ占領下のフランスでは、「天井桟敷の人々」が作られている。戦時中のそれぞれの国の国情や国民性が偲ばれて、興味深い。

本作は、謎の中年紳士と結婚した若妻が、夫の奸計によって次第に追い詰められてゆく様を描いたサスペンス・スリラー。

【あらすじ】

10年前に育ての親の叔母(高名なオペラ歌手)を殺害され、心に深い傷を負ったポーラ(イングリッド・バーグマン)は、ある中年紳士(シャルル・ボワイエ)と恋に落ち、急かされるように結婚する。これであの忌まわしい事件を忘れられる、とポーラが喜んだのも束の間、夫は、叔母が殺されたロンドンの家に住みたいと言い出す。仕方なく承諾したポーラだったが、引越し後、彼女の身の回りで次々と不可解な出来事が起こり始める……。

【感想・レビュー】

この作品は、犯人探しを愉しむ映画ではなく、夫がポーラに仕掛けるトラップの凄味を味わう映画。威圧的な夫が、キツい言葉と甘い言葉を巧妙に使い分けて無垢な妻をマインドコントロールしてゆく様は、何とも薄気味悪く、特に、驚くほど口が達者な夫の弁解がさももっともらしくて、なるほどそうきたか、と唸ってしまうほど。この辺りは、シャルル・ボワイエの演技力を褒めるべきかもしれない。

このスリリングな展開の中で、ホッと一息付けるのは、キャメロン刑事とご近所の物見高いお婆ちゃんの登場シーン。お婆ちゃんの方はほとんどオマケみたいなものだが、この映画にメリハリを付けるいいアクセントにはなっている。

目玉のイングリッド・バーグマンは、「カサブランカ」や「誰がために鐘は鳴る」ほどの輝きは感じられないが、それでも正装した立ち姿や花が咲いたような笑顔などは、これぞハリウッド・スターというオーラがあって、目が点になる美しさ。ファンとしては、それを見るだけで十分元が取れる映画かもしれない。