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🔵映画「群衆」*古き良きアメリカの良心とも言うべき庶民の善意が描かれている作品*(1941アメリカ)レビュー4.0点

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フランク・キャプラ作品の特徴は、社会風刺(権力批判)とヒューマニズム。予定調和的とか偽善的といった評価もあるが、「或る夜の出来事」、「スミス、都へ行く」、「我が家の楽園」など、どれも自分の好みのど真ん中。だから、そんな評価は気にならない。だいたい今時こんな監督、どこを探してもいないだろう。

【あらすじ】

突然リストラを宣告された女性新聞記者(バーバラ・スタンウィック)が会社への腹いせに、「人生に行き詰まった自殺志願者のジョン・ドゥー」という架空の人物をデッチ上げ、彼からの投書という形で最後の記事を掲載する。翌日、この記事が大きな反響を呼んだことから、編集長らは、女性記者を呼び戻し、ジョン・ドゥーのイメージにピッタリの人物(ゲーリー・クーパー)を探し出して、彼女に続編を書かせ、ジョン・ドゥー伝説を創り上げてゆく。やがてジョン・ドゥーは全米中の人気者となり、彼の提唱した草の根運動は大いに盛り上がるが、それを政治的に利用しようとする輩(権力者たち)が現れる。彼らの腹黒い計画に憤ったジョン・ドゥーは、大観衆に向かって全てを告白しようとするのだが……。

【感想・レビュー】

本作も、基本的には、貧しいが純朴で正直な庶民が苦悩や逆境を乗り越え、最後は人間万歳で終わるという王道のストーリーなのだが、今回は、群衆(心理)の怖さを滲ませるシリアスなシーンもあって、いつもより爽快感は乏しい。それでも、古き良きアメリカの良心とも言うべき庶民の善意は抜かりなく描かれていて、やっぱりジーンとさせられる。このあたりは、さすがフランク・キャプラだと思う。人間をとことん肯定する彼の作風は、何より観ていて気持ちがいい。……もっとも、この監督をただの能天気な楽観主義者だとは思わない。人間を肯定的に描く、あるいは人間の良心を描くのは、彼の映画人としての使命感とか哲学なのだろうと思う。

今回の主演は、ハリウッド黄金時代の超大物スター、ゲーリー・クーパー。以前キャプラ監督とは「オペラハット」で組んだこともあってか、余裕で、朴訥で正直で不器用なジョン・ドゥーを好演している。恋人役のバーバラ・スタンウィックも本当に可愛らしく、庶民的で陽気で逞しいキャリアウーマンを生き生きと演じている。