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🔵映画「ブラディ・サンデー」*とても作り物とは思えない圧倒的な映像のリアリティ*(2002イギリス,アイルランド)レビュー4.2点

ブラディ・サンデー  スペシャル・エディション [DVD]

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1972年1月30日、北アイルランドのデリー市で発生した「血の日曜日事件」をドキュメンタリータッチで再現し、検証した映画。

【あらすじ】

北アイルランド紛争の背景にあるのは、イギリス、アイルランド、北アイルランド間の政治的対立と、北アイルランド内のプロテスタントとカトリックの宗派対立、そして、差別と貧困の問題(……らしい)。本作は、北アイルランド市民へのインターンメント(裁判なしの拘禁)撤廃を訴えるデモ隊とそれを鎮圧しようとするイギリス軍との間の衝突を描いた映画だが、そんな重層的な背景に加えて、デモ隊や軍の内部にもそれぞれ穏健派と過激派(強硬派)の対立があって、その複雑な構図や対立構造の根深さに思わず溜息が漏れてしまう。

【感想・レビュー】

この映画の凄いところは、とても作り物とは思えない圧倒的な映像のリアリティ。プロの役者をほとんど使わず、この事件を実体験したエキストラを多数起用して、手持ちカメラで撮った映像が、迫真の効果を挙げている。また、デモ隊と軍のカットを交互に素早く切り替える演出も、息を呑むような緊迫感と臨場感を生み出している。

悲劇を客観的に再現することに重きを置いた映画であるため、(特にデモ隊と軍の衝突シーンは)重苦しくて、やりきれない気持ちにもなるが、依然として憎悪の連鎖が止まらない世界の現状を想うと、これは観るべき映画だろうと思う。

幸い我々は、戦争も紛争も久しく経験していないが、過去の悲劇を忘れないこと、そして、今の世界の不条理(理不尽さ)に思いを致すことはとても大切なことだと思う。一発の銃弾が奪うのは一つの命だけではないこと、ミサイルや爆弾の落下点に多くの普通の暮らしがあること……折に触れ(こういう映画を観ながら)、そんなことを想像してみるのは、平和の恩恵を享受している側の人間の責任でもあるような気がする。

この映画の製作者と監督がイギリス人であることに救われる。イギリスにとって恥ずべき歴史を掘り起こし、検証し、未来の和解へと繋げようという彼らの良心には頭が下がる思いがする。また、エンディングに流れるU2の「Bloody  Sunday」にも勇気づけられる。ちなみにこの事件は、事件発生から38年後の2010年、当時のキャメロン首相の公式謝罪によって、一応の終止符が打たれている。