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🔴本「ビブリア古書堂の事件手帖7」/三上延(メディアワークス文庫)*古書を題材(ネタ)にしたミステリーシリーズの完結編*レビュー4.1点

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

本作は、古書を題材(ネタ)にしたミステリーシリーズの完結編。

各巻でネタとなった書物はどれも興味を惹かれるものばかりで、その渋いチョイスに唸らされ(「おっと、そうきたか!」という感じ)、それぞれの書物の謂れや古書業界の内幕などの薀蓄も愉しめて、本好きには堪らないシリーズ(古書モノに興味のある方は「せどり男爵数奇譚/梶山季之」もオススメ)。中でも、第1巻の小山清(「落穂拾ひ・聖アンデルセン」)、第3巻のロバート・F・ヤング(「たんぽぽ娘」)、第4巻の江戸川乱歩(「孤島の鬼」「押絵と旅する男」)などは、自分のツボにピタリとはまるチョイスで、この作家に長年の同志のようなシンパシーを感じたほど。

【感想・レビュー】

……で、今回のネタは、人類の文化遺産とも呼ぶべき、シェイスピアの戯曲。こんな大ネタを最後の最後に披露するなんて、三上さんもなかなか憎い。

本作では、シェイクスピアの戯曲を集めた最古の作品集(ファースト・フォリオ)をめぐる篠川智恵子・栞子母娘の最後の対決と、栞子と大輔の純な恋の結末が描かれている。今回も、栞子・文香姉妹は可愛いし、展開もなかなかスリリングで、満足の出来なのだが、母親の智恵子だけはとうとう最後まで好きになれなかった(なんて愛嬌のない女!)。

そして、このシリーズの魅力がもう一つ。本のカバーイラストがこの小説のイメージにピッタリなこと。越島はぐさんの絵は、線や色が柔らかく、ノスタルジックな雰囲気が漂っていて、とても好印象。

最後に……ふと思い出したのだが、シェイクスピアの「ハムレット」の『To be, or not to be, that is the question』というセリフ。これを『生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ』と訳した翻訳者のセンスは、本当に凄いと思う。